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2022 年度 実施状況報告書

グルコーストランスポーター1欠損症における新規診断法の確立と簡便な食事療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K08322
研究機関大阪大学

研究代表者

青天目 信  大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30570072)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワードグルコーストランスポーター1欠損症 / 先天代謝異常 / 食事療法 / 移行期医療 / 回帰分析
研究実績の概要

この研究は、グルコーストランスポーター1欠損症(Glut1欠損症)の成人期における妥当な食事療法を検討し、開発することを目指している。2019年度は、成人期の自然歴を小児期の自然歴と対比するため、自然歴研究、および食事療法の有効性について検討し、2020年度は、新規に患者が多数診断されたことを踏まえ、発達・神経学的所見と髄液等との対応について検討した。2021年度は、食事療法を導入して安定期にある患者について、食事中の糖質を増やした患者の経験を後方視的にまとめた。
自然歴研究から、髄液糖と重症度について回帰分析を行った。重症度として、新版K式小児発達検査2001における発達指数(developmental quotient: DQ)、小脳運動失調の重症度スケール(Scale for the assessment and rating of ataxia: SARA)を用いて評価した。乳児期以降診断例で中等度の関連を認めた。乳児期診断例でも髄液糖とDQの間に中等度の関連を認めた。共分散分析を行うと、乳児期以降診断例と乳児期診断例ではp=0.002で両者が同じである仮説は棄却された。乳児期以降診断例で、髄液乳酸を測定していた患者について、同様の回帰分析を行ったところ、髄液糖、髄液乳酸とDQ、SARAの間には、中等度の関連を認めたが、髄液糖と髄液乳酸の間には相関係数は中等度であった。髄液糖と髄液乳酸を説明変数、DQとSARAを目的変数として重回帰分析を行ったところ決定係数が高値となり、髄液糖と髄液乳酸は独立して重症度に寄与することが判明した。
以上の自然歴研究について、論文化ができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

自然歴研究を行い、新しい知見を得られ、論文化することができた。日常的な臨床でも、新たな患者の診断も進み、患者数も増えている。思春期に至った患者において、食事療法をやや緩めても問題ないことは、臨床経験からは言えると考えられる。成人期に至った患者でも同様であった。特に、成人期に至った患者では、知的障害を有して自立できない患者が多いことから、家族の元を離れて入所する場合の食事療法をどのように維持するかということは非常に大きな問題である。診療している成人患者で、家族の元を離れて入所している患者が2名おり、どこまでケトン食療法を緩められるかは、入所している施設が異なるため、同列に比較することは難しい。ただ、入所している患者でケトン食療法を導入し、その後緩めることのできた症例1名、在宅から入所に移行した別の患者1名のケトン食療法の管理を経験し、大きく体調が崩れなかったため、今後の成人期の患者の管理法の構築は道半ばにある。

長期にわたりケトン食療法を行った場合に出現する副作用についても検討を行い、家族例のある症例での脂質異常症、尿路結石、思春期以降の肥満の発生には注意が必要である一方、動脈硬化性変化や脂肪肝は認めていない。

今後の研究の推進方策

食事療法中の様々な年齢の患者について、在宅でケトン食療法を行っている患者について、通常のケトン食療法を行っている時の血糖とケトン体の日内変動を把握する。食事内容を記録して栄養士にて、1食ごとの総カロリー、糖質・脂質摂取量、ケトン比を求めて、それが血糖値やケトン体の日内変動にどのような影響を与えているのかを検討する。また、それを年齢により異なるかを検討する。
ついで、神経症状が発現した時の血糖値やケトン体を測定する。血糖値やケトン体の絶対値と食事との関係を調べ、ついで、神経症状と血中濃度に対応があるかを検討する。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症蔓延に対する病院での対策に時間をとられ、倫理委員会書類の作成などに時間をさけなかった。
今年度、血糖・ケトン体測定装置を購入して、研究を進める予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Association between cerebrospinal fluid parameters and developmental and neurological status in glucose transporter 1 deficiency syndrome2023

    • 著者名/発表者名
      Nabatame S, Tanigawa J, Tominaga K, Kagitani-Shimono K, Yanagihara K, Imai K, Ando T, Tsuyusaki Y, Araya N, Matsufuji M, Natsume J, Yuge K, Bratkovic D, Arai H, Okinaga T, Matsushige T, Azuma Y, Ishihara N, Miyatake S, Kato M, Matsumoto N, Okamoto N, Takahashi S, Hattori S, Ozono K.
    • 雑誌名

      Journal of the Neurological Sciences

      巻: 447 ページ: 120597~120597

    • DOI

      10.1016/j.jns.2023.120597

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Ketogenic diet for focal epilepsy with SPTAN1 encephalopathy2022

    • 著者名/発表者名
      Kishimoto K, Nabatame S, Kagitani-Shimono K, Kato M, Tohyama J, Nakashima M, Matsumoto N, Ozono K.
    • 雑誌名

      Epileptic Disorder

      巻: 24 ページ: 726-728

    • DOI

      10.1684/epd.2022.1441.

    • 査読あり
  • [学会発表] GLUT-1欠損症治療におけるケトン食の実際2023

    • 著者名/発表者名
      青天目 信
    • 学会等名
      第1回日本ケトン食療法学会
    • 招待講演
  • [学会発表] Ketogenic diet introduction and modification in an adult patient with Glut1 deficiency syndrome2022

    • 著者名/発表者名
      Shin Nabatame, Masashi Mukai, Katsuhiro Ogawa, Junpei Tanigawa, Koji Tominaga, Kuriko Shimono-Kagitani, Toshiyuki Mano, Keiichi Ozono
    • 学会等名
      第64回日本小児神経学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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