研究課題/領域番号 |
19K08325
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
藺牟田 直子 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (00643470)
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研究分担者 |
児玉 祐一 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20535695)
西 順一郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (40295241)
大岡 唯祐 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 講師 (50363594)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | K1莢膜遺伝子 / ESBL / CTX-M / 下痢原性大腸菌 / 血液由来大腸菌 / 腸管凝集性大腸菌 |
研究実績の概要 |
本年は2017・18年に鹿児島県で収集した小児下痢症患児由来大腸菌646株(2017年337株、2018年309株)と2018年に鹿児島大学病院入院患者の血液由来大腸菌51株中35株(消化器外科12株、消化器内科7株、血液膠原病内科5株、救急科11株)を対象とした。各株の病原遺伝子保有状況、薬剤耐性遺伝子をPCRで検索、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)CTX-M遺伝子はタイピングを行った。また、血液由来株と腸管凝集性大腸菌(EAEC)はバイオフィルム形成能(BI)も検討した。その結果、K1莢膜遺伝子は便由来株17.6%、血液由来株15.2%が保有していた。下痢原性大腸菌(DEC)病原遺伝子の頻度は便由来株でEAEC 0.7%、腸管病原性大腸菌(EPEC)4.3%、血液由来株ではEAECが2.8%で、どちらの株もほかのDEC病原遺伝子は検出されなかった。便由来EAECのO血清群はO86・O111・O127がみられ、O127以外は強いBIを示し、EAECの染色体上の遺伝子aaiCを保有する典型的なEAECであった。一方血液由来EAECはO6でphylogroup B2に属し尿路病原性大腸菌(UPEC)の病原遺伝子(afa, pap)を保有、BIは0.14と低い値を示した。CTX-M遺伝子の保有率は便由来株8.0%、血液由来株34.2%であった。便由来株ではAmpC遺伝子保有株が0.9%、K1莢膜遺伝子保有EPECが7%、K1莢膜遺伝子とCTX-M保有株が1.3%見られた。CTX-Mタイプは、CTX-M-27が最も多く、次いでCTX-M-15が多くみられた。またグループ1と9のハイブリッドタイプCTX-M-64が1株見られた。血液由来株では救急部の株のBIが低くK1莢膜遺伝子保有株の80%を占めたが、CTX-M保有株は消化器外科・内科の株が92%を占めた。よって患者背景の違いによる大腸菌の遺伝的多様性が示唆され、それに応じた治療法やリスク管理が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、2017・18年に鹿児島県で収集した小児下痢症患児由来大腸菌に加えて、鹿児島大学病院入院患者の血液由来株を一部解析することができた。これにより、便由来大腸菌と血液由来大腸菌の比較、また、血液由来大腸菌の診療科別の特徴などが明らかになり課題の遂行に大変有意義であった。しかし、解析に時間を有したために収集した検体と2019年に収集した菌株の解析が十分にできなかったことが今年度の課題であった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年から2018年に収集された下痢原性大腸菌に加えて、2019年に収集された便由来株、ならびに2018年、2019年に収集された血液由来株からK1遺伝子保有株とESBL産生菌をスクリーニングし、病原遺伝子や薬剤耐性遺伝子を検討し、MLSA(multilocus sequence analysis)を行う予定である。MLSAによる系統解析の結果から代表株を選択、血清殺菌抵抗性の比較や食菌作用の比較などを検討し、ワクチン標的分子の検討の基盤とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、2017・18年に鹿児島県で収集した小児下痢症患児由来大腸菌に加えて、鹿児島大学病院入院患者の血液由来株を一部解析することができた。しかし、解析に時間を有したために収集した検体と2019年に収集した菌株の解析が十分にできなかったため、それに関する経費が余った。上記菌株の遺伝子解析や系統解析に要する費用として使用する予定である。
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