研究課題/領域番号 |
19K08327
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
國本 浩之 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80372853)
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研究分担者 |
中嶋 弘一 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (00227787)
濱崎 考史 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (40619798)
井上 晃 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (50109857)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 精子形成不全 |
研究実績の概要 |
RNA-binding motif protein 10(RBM10)は、選択的スプライシングに関与するRNA結合タンパクである。近年RBM10が、種々の奇形を伴う致死的X連鎖劣性遺伝病(TARP症候群)の原因遺伝子であること、また肺腺がんでも高頻度にRBM10変異が見つかっている。我々はRBM10の生理的役割を明らかにするため、ES細胞からRBM10ノックアウトマウスの作製を試みると、得られた雄キメラマウスは不妊を呈し、その精巣は萎縮しており、造精機能障害となることを見出した。 本研究では、RBM10を臓器あるいは時間特異的に欠損可能なマウスを作製し、RBM10欠損が造精機能障害の原因となり得るかの検証およびその発症機序の解明を目的とする。 (方法)マウスの発生・成長段階の種々の時期にRBM10欠損が可能となるよう、RBM10遺伝子をloxP配列で挟んだ(RBM10 floxed)マウスを作製した。またタモキシフェン投与で全身性にCreリコンビナーゼを誘導・活性化できるUbc-Cre-ERT2マウスを入手した。そこでRBM10 floxedマウスとUbc-Cre-ERT2マウスを交配し、タモキシフェン投与により全身の組織でRBM10を欠損可能なコンディショナルRBM10KO雄マウスを解析した。 (結果)性成熟前の4週齢コンディショナルRBM10KO雄マウスに100mgタモキシフェン/kgを連続5日間投与し、性成熟後(9-11週齢)の精巣の重量と体重を測定するとコントロール群に比し、タモキシフェン投与群で精巣/体重比が有意に低下していた。このとき、タモキシフェン投与群の精細管では不完全な精子形成を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の早期にキメラマウスで確認した精巣の萎縮・造精機能障害をコンディショナルRBM10KO雄マウスで再現することに成功した。また、発生段階で全身性にRBM10欠損すると胎生致死となるが、発生後にRBM10欠損させても性成熟期までは正常に発育することがわかった。したがって、精子形成におけるRBM10の機能解析に注力することが可能となった。 以上から、本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、前年度の研究を発展させ、精巣内のセルトリ細胞(生殖細胞の生存と発育を補助する細胞)特異的にRBM10を欠損させ、精巣および精子形成の観察を行う。 RBM10欠損により精子形成がどのステージで停止しているのか、さらにコントロール精巣と種々のmRNA・タンパク質の発現変化を比較し、その原因を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
早期にコンディショナルRBM10KOマウスの作製に成功したため繰越が発生したが、次年度は、より数多くのマウスの飼育・解析を行う予定であり、繰越分の費用はマウス飼育費(費目:その他)に計上予定である。
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