研究課題
今年度は当初予定していた研究実施期間を1年延長して、追加実験を行った。その結果、研究期間全体を通じて以下を明らかにした。①R3HDM1欠損症の患者では、リンパ芽球培養細胞におけるR3HDM1の発現量が健常者の約60%に低下していたが、R3HDM1のイントロン18に局在するmiR-128-1の発現量は、健常者との差が認められなかったため、本症例はR3HDM1単独の欠損症であることが確定した。②マウス胎児の初代海馬培養細胞のR3HDM1をノックダウンすると、正常細胞に比べて神経突起の長さと分枝の数が共に約60%低下した。③miR-128は、知的障害の病因遺伝子PHF6の3'UTRに作用してマウス脳の神経突起の伸長を抑制する。一方我々は、R3HDM1がmiR-128のPHF6に対する作用を阻害して、神経突起の伸長作用を促進する可能性があることをluciferase reporterアッセイにより明らかにした。④神経突起におけるR3HDM1の分布と移動について明らかにするために、マウス胎児の大脳皮質培養神経細胞に対して、チューブリン重合阻害剤であるノコダゾールを加えた結果、R3HDM1の神経突起上での局在量が減少した。さらに、ノコダゾール処理後にノコダゾールを含む培養液を除去するリリース実験を行った結果、リリース後0.5時間で神経突起におけるR3HDM1の局在量が回復した。これより、R3HDM1は細胞体から短時間で神経突起に移動することが明らかになった。⑤i-GONAD法によるモデルマウスの作製については、R3HDM1のホモ欠失、ヘテロ欠失それぞれのマウスの作出に成功し、系統維持を行っている。一方、本症例の発症にR3HDM1と共に関与すると考えられるmiR-128-1についても、MIR128-1遺伝子の欠損モデルマウスの作出に成功し、系統維持を行っている。
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