研究実績の概要 |
我々は、昨年度に、オートファジーや各々の抗原が感染を契機とした気管支喘息の発症と強く関わることが報告され始めている、抗菌性タンパク質(RNase 7, ベータディフェンシン)が、各種抗原刺激(Lyn 1604, AICAR, 低分子量Poly IC, ALT-E, LPS, YKL, HDM)により、どのような影響をうけるかを、タンパクの量を測定することで検討した。結果として、ヒト気管支上皮細胞(HBEC-KT cell)を 低分子量Poly I:Cにて刺激を行うことで、ベータディフェンシンの有意な上昇をきたすというデータを得ることができた。当該年度は、その研究をより詳細に把握するために、miRNAを網羅的に検索することができるマイクロRNAアレイ を用いて同様の刺激にてベータディフェンシン を誘導するmiRNAの同定を試みようとした。しかしながら、昨年度に引き続くコロナウイルス感染症による移動制限、資材調達に時間がかかってしまったことなどの理由により、本年度は結果を出すことができず、情報収集のみにとどまることになってしまい、一年間の延長申請を行った。令和4年度は、低分子量Poly I:C の刺激にてヒト気管支上皮細胞から放出された、miRNAを同定し、予備的研究として我々が以前行ったアレルギー疾患発症患児と非発症患児の母乳中miRNAのプロファイルと比較することで、アレルギー疾患発症のために重要な役割を果たす可能性のあるmiRNAを同定することを目的とする。また、今回得たデータは、現在その機序がわかっていないウイルス感染を引き金とする気管支喘息の病態解明に役立つものと思われる。
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