研究課題/領域番号 |
19K08341
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 昌弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院教授 (40343206)
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研究分担者 |
佐藤 義朗 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (30435862)
奥村 彰久 愛知医科大学, 医学部, 教授 (60303624)
鈴木 俊彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (60711083) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胎児発育不全 / 慢性肺疾患 / 妊娠高血圧腎症 |
研究実績の概要 |
新生児慢性肺疾患(CLD)は早産児の代表的な合併症の1つであり、重症例では青年期まで至る呼吸障害が問題となる。一方、在胎期間に比して体格が小さく出生した児(SGA)の原因は様々であるが、妊娠高血圧症候群(HDP)が原因のSGA(HDP-SGA)ではCLDの頻度が高く重症化することが知られている。しかしながら、過去の報告は疫学研究が主体であるため、その病態や重症化機序は十分に解明されておらず、有効な治療法についても確立されていない。本研究では標準体重で出生した児と比較検討することでSGAにおけるCLDの病態および重症化機序解明を行う。併せて傷害組織に生着・分化して直接的に組織修復をする特徴を持つMultilineage-differentiating stress enduring cells (Muse細胞)を用いた新規治療法の検討を行う。 HDP-SGAに重症CLDの頻度が高い理由として、胎児期の血流障害による肺組織障害、胎児期の低栄養による肺組織成熟の阻害が重要な因子という仮説を基に、HDPによる子宮内発育不全を模倣した胎児低灌流モデルを用いて検討を行う。 妊娠17日目のSDラットの子宮動脈および卵巣動脈にマイクロコイルを装着し、胎児低灌流モデルを作成する。出生後15日間83%の高濃度酸素に暴露しCLDモデルを作成し、同時に作成した胎児低灌流モデルではないCLDモデルと、下記の評価方法で比較検討する。 ①呼吸機能評価②右心負荷評価③組織学的評価④肺組織の生化学的評価。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
妊娠17日目のSDラットの両側子宮動脈および卵巣動脈に長さ2.5mm、直径0.24mmのマイクロコイルを装着し、胎児低灌流による子宮内発育遅延モデル(FGR)を作成した。生後15日間83%の高濃度酸素に暴露しCLDモデルを作成(FGR-CLD)し、同時に作成した胎児低灌流モデルではないCLDモデル(Sham-CLD)と比較検討を行った。 高濃度酸素暴露終了直後の生後15日目に、呼吸機能検査(whole body plethysmography)を実施し、1回換気量および分時換気量、気道収縮を評価した。Sham群と比較してCLDモデルにおいて有意な1回換気量や分時換気量の低下、気道収縮の増加を認めたが、FGR-CLDとSham-CLDの間に有意差は認めなかった。生後4週でも呼吸機能検査(Flexivent)を実施し、動肺抵抗および静肺コンプライアンス、肺弾性抵抗を評価した。Sham群と比較してCLDモデルにおいて有意な動肺抵抗や肺弾性抵抗の増加、静肺コンプライアンスの低下を認めたが、FGR-CLDとSham-CLDの間に有意差は認めなかった。右心負荷評価である乾燥心臓重量測定では、Sham群と比較してCLDモデルで右室と左室+心室中隔比の有意な増加を認め、Sham-CLDと比較してFGR-CLDで増加する傾向を認めたが、有意な差には至らなかった。一方、組織学的評価である組織対密度では、Sham-CLDと比較してFGR-CLDにおいて有意な組織対密の低下を認めた。 呼吸機能検査においては、FGRにおける明らかなCLDの重症化を認めなかったが、組織学的評価においては、今までの疫学研究と同様のFGRにおいてCLDが重症化する可能性を示唆する結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は最終年度であり、胎児発育不全モデルの脳、肺の検討を進めて総括を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大にて出張旅費の執行が少なかったため。令和3年度の出張旅費および試薬購入にあてる。
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