研究課題
最近アジア諸国、先天代謝異常による小児の障害発生予防を目的として、新生児マススクリーニングに対する関心が高まっている。このうちタンデムマス(TMSスクリーニング)を導入する国・地域も増加しつつある。TMSスクリーニングの対象疾患は、種類は多いが個々の疾患の頻度は極めて低く、疾患の診断、治療が確立しにくい疾患も少なくない。アジア諸国と共同研究によって、国・地域による疾患頻度、重症度、遺伝背景の違いを調べることは将来の国際協力に役立つ。アジア諸国の中で、TMSスクリーニングを導入、または導入を考えている国を対象に、TMSスクリーニング対象疾患を調査した。これまでのところ、日本(新生児スクリーニング数:778万)、北京大学(7万)、上海交通大学(110万)、台湾(201万)、フィリピン(186万)、ハノイ(6万)の2018年までの結果が集まっている。国ごとの頻度の高い疾患は以下の通りであった。日本:①プロピオン酸血症(1:4.8万)、②高フェニルアラニン血症(HPA)、③VLCAD欠損症であった。北京大学:①メチルマロン酸血症(MMA)(1:0.9万)、②HPA、上海:①HPA(1:0.9万)、②MMA、③カルニチン欠乏症(PCD)、台湾:①MCC欠損症(1:3.5万)、②PCD、HPAであった。フィリピン:①MCAD欠損症(1:14.3万)、②MSUD、③グルタル酸血症Ⅰ型、ハノイ:①βケトチオラーゼ欠損症、①HPA (両者とも1:2.0万)などの順であった。今年度2019年のデータを追加すること、参加する国を増やすこと、またハイリスクスクリーニングの結果についても調査を進め、地域による偏りも明らかにして、国際協力のみならず人類遺伝学的知見も加える。
3: やや遅れている
昨年2018年までのデータをいくつかの国から受け入れたが、2019年のデータの追加、ハイリスクスクリーニングのデータを追加したい。各国とも新型コロナ流行のため研究が滞る傾向にあるためか、アジア諸国のアンケートへの回答が遅れ気味である。またタンデムマス導入も遅れ気味の傾向あり。
より正確な数字として解析するために、調査するアジアの国を増やして依頼する。マススクリーニングのみならず発症後に診断された(ハイリスクスクリーニング)患者数を調査する。2018年までのデータを収集したが、最近〈2019年〉までのデータの追加を依頼する。
新型コロナウィルス対策のため、アジア諸国に調査依頼しても反応が遅くなりがちであり、研究スピードに支障あり。また予定していた国内外の学会出張、調査出張ができなかったため、年度内の支出が困難であった。
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すべて 雑誌論文 (4件) 学会発表 (2件)
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