研究課題
最近経済発展を遂げたアジア諸国を中心に新生児マススクリーニング(NBS)に対する関心が高まっている。タンデムマス(TMS)を導入する国・地域も増加しつつある。TMSスクリーニングの対象疾患の頻度を中心に東アジア東南アジアを対象にTMSスクリーニングの結果を調査し、国ごとに比較し以下の結論を得た。1)東アジア(日本、中国、台湾)だけでも発見される疾患と頻度は大きく異なることが分かった。日本(新生児スクリーニング数:867万)では①プロピオン酸血症(1:4.7万)、②PKU (1:5.4万)、③VLCAD欠損症(1:9.3万)が多かった。これに対し上海交通大学(110万)では①HPA(1:0.9万)、②MMA(1:2.9万)、③カルニチン欠乏症(PCD)(1:3.4万)であった。台湾(201万):①HPA (1:3.0万)、②メチルクロトニルグリシン尿症(MCG)(1:3.4万)、③カルニチン欠乏症(PCD)(1:3.9万)であった。2)東南アジア(フィリピン、ハノイ)とも大きく異なることが分かった。フィリピン(186万)では①PCD(1:14.3万)、②メープルシロップ尿症(MSUD)(1:15.5万)、③グルタル酸血症Ⅰ型GA1)(1:16.9万)が多かった。ハノイ(ベトナム)では①HPAとβケトチオラーゼ欠損症(1:2.0万)、③MSUDとMCG(各1:3.0万)が多かった。3)国別の特徴をみると、日本ではプロピオン酸血症が特異的に高く、上海と台湾では、HPAの外にMCGやPCDが多かった。東南アジアでは日本や中国に比較してMSUDの頻度が高いこと、さらにハノイではBKTDが特徴的に高頻度であった。
3: やや遅れている
今年度2019年のデータの追加、ハイリスクスクリーニングのデータを追加する予定であったが、各国とも新型コロナ対応でデータ収集が遅れ、一部の国のデータは得られなかった。アジア諸国のアンケートへの回答が遅れ気味である。またタンデムマス導入も遅れているため、当初の予定のデータが集まりにくかった。
1)各国のデータ蓄積:各国からできるだけ2020年までの新しいデータ収集に努める。2)ハイリスクスクリーニングのデータ収集:マススクリーニングの意義を明らかにするため、発症患者を対象とした臨床検査(ハイリスクスクリーニング)のデータも収集する。3)文献による調査:アンケート調査のみならず文献調査によって、アジア諸国の疾患分布を比較検討して、最終的に目的達成を図る。
2021年度は新型コロナの影響で、国際協力が予定よりも進みにくく、学会等参加もしにくく、研究進捗が遅れ、また研究成果発表の機会が少なかったため、次年度に成果発表情報交換の費用が必要となる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件)
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