昨年度までの研究で、内臓錯位を伴う複雑型先天性心疾患を発症した家系で、心臓発生に必須のNODAL、TBX20遺伝子の機能喪失型バリアントを同定した。これらのバリアントの病的意義について機能解析を行った。 NodalおよびTbx20遺伝子改変マウスの交配により、Nodal/Tbx20ダブルヘテロノックアウトマウスを作製し、心大血管表現型について解析した。ダブルヘテロノックアウトマウス幼獣の出生頻度は野生型幼獣の出生頻度と比較して有意に低く、心室中隔欠損が認められた。NodalおよびTbx20の機能喪失により先天性心疾患を生じた結果、心不全により胎内死亡することが示唆されたが、Tbx20シングルヘテロノックアウトマウスにおいても心室中隔欠損が検出され、ダブルヘテロマウスとの有意な表現型の違いが観察されなかった。現在、胎生9.5日のNodal+/- Tbx20-/-マウスとダブルヘテロマウスの心臓形態の比較を行っている。 一方、ダブルヘテロノックアウトマウスにおける肺血管形態の可視化を目的として、 IP3R2-LacZホモマウスと交配し、β-gal染色を行った。ダブルヘテロノックアウトマウスで、野生型と比較して肺血管の密度が高いマウスの出現頻度が高い傾向を認めた。 患者家系で同定されたNodal遺伝子のバリアントを培養細胞に導入し、Nodalの下流因子であるSmad2およびSmad3のリン酸化の程度を、野生型Nodal遺伝子を導入した場合と比較したが、明らかな差を認めなかった。Nodalの主要下流因子であるPitx2に着目し、胎生9.5日のTbx20ホモノックアウトマウス胎仔において定量的PCRを行ったところ、Pitx2の発現が低下し、Tbx20にも制御されていることが示唆された。
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