研究実績の概要 |
早期の生育環境が子の発達に大きな影響を与えることから、生後のストレス脆弱性やうつ病などの精神・神経疾患に影響を与える。これまでの申請者等の研究で、脳内免疫細胞のミクログリアは幼若期の環境で活性化が左右され、生後の神経細胞や脳内免疫システムの破綻を生み出している知見を得ている。本研究では、決定された脳内免疫細胞の特性がどの位シナプスの可塑性や成熟に関わるのかその解明を目指す。上記の疾患が幼児期、すなわち脳内に侵入する時期の早期ミクログリアの神経-グリア相関の破綻にあると位置づけ、ミクログリアの異常が成熟脳のシナプス刈り込み異常に起因している事を証明する。 これまでに申請者の手法で90%以上の純度のミクログリアを分離する事が可能になり、脳内に浸潤する単球由来細胞がミクログリアに分化する過程における特性を調べた。その結果、単球由来細胞CD45/CD11bの発現強度でミクログリアは四種の亜集団(A,B,C,D)に分けられ、全てミクログリア細胞のマーカーであるIba1陽性細胞である事が分かっている。 R2年度は母子分離ストレス群とコントロール群では比較をおこなった。コントロール群ではミクログリアが従来染色性を持つF4/80陽性細胞(Iba1+/F4/80+)であるにも関わらず、ストレス群ではF4/80陰性細胞(Iba1+/F4/80-)であることが免疫染色法より分かった。さらに、FACSによる解析で4つの亜集団に分類されることが分かったが、これらは産生時期の由来によって違っていることが分かった。この結果から、幼若期ストレスによってミクログリアの由来が卵黄嚢由来から骨髄由来に変化する事が示唆され、骨髄由来のミクログリアが活性化をしていることが示唆された。次年度はミクログリアの活性がシナプスにどう影響があるのかin vivo, in vitroの系で確認する。
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