研究課題/領域番号 |
19K08356
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
犀川 太 金沢医科大学, 医学部, 教授 (60283107)
|
研究分担者 |
小松崎 俊彦 金沢大学, フロンティア工学系, 教授 (80293372)
西山 宣昭 金沢大学, 高等教育開発・支援系, 教授 (10198525)
八田 稔久 金沢医科大学, 医学部, 教授 (20238025)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | コンピュータシミュレーション / 急性骨髄性白血病 / 白血病幹細胞 / 再発予知 / 標的治療 |
研究実績の概要 |
現在までに開発した急性骨髄性白血病モデル(3次元コンピュータシミュレーションモデル)を用いて、急性骨髄性白血病の再発のメカニズムを解明することを目的として研究を実施した。急性骨髄性白血病モデルは、コンピュータ上の3次元空間(仮想骨髄腔)にセルオートマトン(cellular automata)原理に基づく正常好中球系造血を構築し、さらに白血病幹細胞システムを導入することで急性骨髄性白血病モデルを完成させた。この白血病モデルに日本小児がん研究グループで用いられる化学療法を模した治療を導入し、完治型急性骨髄性白血病治療モデルと再発型急性骨髄性白血病モデルを完成させた。 2019年度の研究計画は、上記モデルを用いて「治療後に残存する白血病幹細胞および白血病細胞の長期的変動」を解析し、「完治と再発を分ける細胞挙動の分岐点(微小環境)」を見出すことに主眼を置いた。分岐点が明らかになれば「再発を予測する」基盤となり得る。そのためには治療後に残存する白血病幹細胞を追跡(モニタリング)が必要であり、目的とする白血病幹細胞に目印をつけるマーキング機能のプログラムを開発した。一方、最適な治療法を見出す目的で「完治・再発率」と「治療強度」の関係の解析を進めた。臨床的抗癌剤の効果は「分裂期細胞が治療実施期間に存在した場合に消去される」プログラムで表現可能である。この消去率を変化させることで治療強度を変えることが可能となる。 上記解析を進める過程で、個々の細胞情報を記録する方向性が細胞の分化と増殖に「不公平性」を生じさせ、結果的に細胞分布に影響を及ぼす可能性が明らかとなった。この問題点を解決し、最終的に「不公平」を排除した新しい完治型急性骨髄性白血病治療モデルと再発型急性骨髄性白血病モデルが完成した。今後はこの新モデルを用いて「完治と再発を分ける細胞挙動の分岐点」の解析を鋭意進めていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Windows10対応の計算PC(ワークステーション)4台を導入した。計算能力は高く、これまでのシミュレーションに要した時間を約半分に短縮することができた。さらに、白血病幹細胞に目印をつけるマーキング機能のプログラムを開発したことで、「治療後に残存する白血病幹細胞および白血病細胞の長期的変動」を追跡することが可能となった。 上記解析を進める過程で、個々の細胞情報を記録する方向性が細胞の分化と増殖に「不公平性」を生じさせ、結果的に細胞分布に影響を及ぼす可能性が明らかとなった。シミュレーションの根幹に関わる問題であり、早急かつ徹底的な改善を必要とした。最終的に「不公平」を排除した新しい完治型急性骨髄性白血病治療モデルと再発型急性骨髄性白血病モデルが完成した。問題点の解決にはやや時間を要したが、大幅な予定の遅れとはなっていない。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度にシミュレーションロジックに問題のない急性骨髄性白血病治療モデルが完成した。これを用いて2020年度以降は「完治と再発を分ける白血病幹細胞の細胞挙動の分岐点」の解析を進めていく。予備的シミュレーションではマーキングされた白血病幹細胞の継時的情報データ量は膨大となり、1回のシミュレーションで250GBにも上る。解析には労力と時間を要することが予想されている。分岐点の解析には白血病幹細胞の細胞挙動を可視化し、動画化が必須であり、そのためのグラフィックソフトおよびデータ抽出の自動化プログラムの開発が必要である。
|