研究課題/領域番号 |
19K08361
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
溝上 裕士 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (70268556)
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研究分担者 |
鈴木 英雄 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (00400672)
蕨 栄治 筑波大学, 医学医療系, 講師 (70396612)
内田 文彦 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (70736008)
岡田 浩介 筑波大学, 附属病院, 病院講師 (80757526)
正田 純一 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90241827)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | NASH / 歯周病 / 口腔内細菌叢 / LPS / ゲノム解析 / Nrf2 |
研究実績の概要 |
本邦では非アルコール性脂肪性肝炎(nonalcoholic steatohepatitis: NASH)と歯周病が劇的に増加している.腸内細菌叢に加え口腔内細菌叢の異常(dysbiosis)は肥満におけるNASH発症と肝発癌を促進する可能性がある.肥満におけるNASHの発症には腸肝相関(Gut-Liver Axis)が存在し,肝臓は種々の腸管由来の因子により影響を受ける.代表者らはNASHを合併する肥満者では, LPSの血中濃度が高いことを報告している(J Gastroenterol 2018) . LPSはこれまで腸内細菌由来と考えられてきたが,最近では,歯周病菌感染由来のLPSとNASHとの関連性が報告されている. 代表者らは歯周病と診断された中年男性を対象に唾液をサンプルとし,口腔内細菌叢のメタゲノム機能予測解析,唾液成分の測定を行った.その結果,口腔内細菌の菌層構造の多様性の低下,唾液LPS濃度,TNF-alpha濃度の増加が観察された(口腔科学会2020). ヒトNASHモデルとしてSqstm1およびNrf2遺伝子二重欠失(DKO)マウスは有用である(Exp Anim 2018).本マウスに高カロリー食として高脂肪/ショ糖食を24週間摂餌させると,NASH肝病変の進展が加速し,全例に強い肝線維化と50%の頻度で肝癌(通常食の4倍の頻度)が認められた. この背景には高カロリー食による口腔内細菌叢と腸内細菌叢の変容,LPSによる炎症シグナルの増大が推測された.現在,本マウスより唾液を採取して,メタゲノム機能予測解析を進捗させている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NASHを有し歯周病と診断された中年男性では,口腔内細菌の菌層構造の多様性の低下,それに関連して唾液LPS濃度,TNF-alpha濃度の増加が認められ,口腔内細菌叢の異常と口腔内環境の劣悪化が推測された.ヒトNASHモデルであるDKOマウスにおいても高カロリー食の摂餌にて肝病変の増悪と肝発癌が増加した結果を得ており,口腔内細菌叢の変容は興味深い.
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今後の研究の推進方策 |
DKOマウスを用いて,歯周病菌感染がNASHと肝癌の発症を促進させるかどうかを検証し,その結果より,口腔内dysbiosisがOral-Gut-Liver Axisを介してNASHと肝発癌により深く関与する新しいコンセプトを構築する. また,DKOマウスをベースに,Nrf2遺伝子の腸管上皮,Kupffer細胞の細胞特異的遺伝子レスキュ-マウスを作製する.歯周病菌感染のもと各レスキューマウスにおけるNASHと肝発癌の頻度を観察し,Oral-Gut-Liver Axisの各部位臓器におけるKeap1-Nrf2 pathwayの生体防御機構としての役割を検証していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度末までに物品の納品が来なかったため。
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