微小環境トランスクリプトームによるヒト膵癌理解と治療最適化戦略の確立

2021 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 19K08362
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 濱田 毅 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (90723461)
• 研究分担者: 立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948) ; 中井 陽介 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (80466755)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 膵癌 / 微小環境 / ヒト / 分子病理疫学 / 予後解析

研究実績の概要

【背景・目的】膵癌組織の大部分を占めるがん随伴性線維芽細胞（CAF）や免疫細胞などの間質系細胞と、産生される膠原線維や増殖因子が腫瘍促進的な微小環境を構成し、癌細胞増殖と治療抵抗性を誘導する。また、腫瘍細胞の不均一性はそのサブタイプの違いや薬剤感受性などに関わる。本研究では膵癌細胞とCAFの多様性と疫学的・臨床データを統合し、相互の相関を解析することで包括的なヒト膵癌の理解を目指す。
【研究の方法】多施設での臨床組織検体を用いる。まずは膵癌におけるドライバー遺伝子変異であるKRAS変異をddPCRで解析し、RNA発現解析や、免疫染色によるCAFや免疫細胞マーカーを検討する。治療予後などの臨床情報、使用薬剤、嗜好品などの疫学的情報も統合的にデータベース化し、お互いの相関関係を検討することで、いわゆる分子・病理・疫学の統合解析（MPE解析）を推進する。
【研究成果】異なる癌前駆細胞から発生した異なるサブタイプからなる約30例の膵癌症例の遺伝子変異およびRNA発現解析を行い、それぞれに特異的な遺伝子変異パターンを同定し、RNA発現による層別化が可能であり、特異的な分子標的を探索可能であることを報告した（Gastroenterology PMID34953915）。さらに多施設共同による約1400例のコホートを集積し、KRAS変異例におけるvariant allele frequency (VAF)が、膵癌術後の無再発生存期間および全生存期間と相関するという結果を得た（in submission）。癌抑制遺伝子のサロゲートとしてP16・SMAD4の欠損・P53異常蓄積、さらには細胞の表面マーカー（CD3, CD4, CD8およびFoxp3, CTLA4, PD-1, CD45Rなど）などの発現の検討を進めている。

研究成果

• [雑誌論文] MNX1-HNF1B Axis Is Indispensable for Intraductal Papillary Mucinous Neoplasm Lineages (2022)
  • 著者名/発表者名: Kato H, Tateishi K, Fujiwara H, Nakatsuka T, Yamamoto K, Kudo Y, Hayakawa Y, Nakagawa H, Tanaka Y, Ijichi H, Otsuka M, Iwadate D, Oyama H, Kanai S, Noguchi K, Suzuki T, Sato T, Hakuta R, Ishigaki K, Saito K, Saito T, Takahara N, Kishikawa T, Hamada T, Takahashi R, Miyabayashi K, et al.
  • 雑誌名: Gastroenterology 巻: 162 ページ: 1272～1287.e16
  • DOI: 10.1053/j.gastro.2021.12.254
  • 査読あり
• [雑誌論文] KRAS variant allele frequency, but not mutation positivity, associates with survival of patients with pancreatic cancer (2022)
  • 著者名/発表者名: Suzuki T, Masugi Y, Inoue Y, Hamada T, Tanaka M, Takamatsu M, Arita J, Kato T, Kawaguchi Y, Kunita A, Nakai Y, Nakano Y, Ono Y, Sasahira N, Takeda T, Tateishi K, Uemura S, Koike K, Ushiku T, Takeuchi K, Sakamoto M, Hasegawa K, Kitago M, Takahashi Y, Fujishiro M.
  • 雑誌名: Cancer Science 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1111/cas.15398
  • 査読あり / オープンアクセス
• [雑誌論文] ABO Blood Group and Risk of Pancreatic Carcinogenesis in Intraductal Papillary Mucinous Neoplasms (2021)
  • 著者名/発表者名: Hamada T, Oyama H, Nakai Y, Tada M, Koh H, Tateishi K, Arita J, Hakuta R, Ijichi H, Ishigaki K, Kawaguchi Y, Kogure H, Mizuno S, Morikawa T, Saito K, Saito T, Sato T, Takagi K, Takahara N, Takahashi R, Tanaka A, Tanaka M, Ushiku T, Hasegawa K, Koike K.
  • 雑誌名: Cancer Epidemiology, Biomarkers and Prevention 巻: 30 ページ: 1020～1028
  • DOI: 10.1158/1055-9965.EPI-20-1581
  • 査読あり