研究課題/領域番号 |
19K08368
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
白木 亮 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (60402195)
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研究分担者 |
華井 竜徳 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 特任助教 (40585494)
白上 洋平 岐阜大学, 医学部附属病院, 助教 (50632816)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝硬変 / 骨格筋 / 握力 |
研究実績の概要 |
肝臓は骨格筋と臓器間ネットワークを構築し、糖質・脂質・蛋白質の貯蔵代謝を制御している。肝硬変患者では、2次性のサルコペニア(骨格筋の量および質 の低下)を高率に合併する。本研究は、肝筋相関の異常が、肝不全の進展および肝発癌に及ぼす影響を明らかにし、同病態の改善を介した肝不全および肝発癌防法検討する。慢性肝疾患のデータベースを構築し、骨格筋と予後に焦点を当てコホート研究をおこなった。また多施設共同研究で肝硬変患者の筋痙攣について日本の多施設共同研究を行った。さらに肝硬変患者の栄養状態についても研究を行った。慢性肝疾患患者において、骨格筋量あるいは筋力(握力)の低下が予後に関連し、肝機能とは独立した因子であることをコホート研究より論文化し報告した (Hepatol Res. 2019 Dec;49(12). Hepatol Res. 2019 Jan;49(1))。その際に、肝硬変による浮腫・腹水で使用するループ利尿剤は骨格筋減少のリスク因子であるこを報告した(Hepatol Res. 2019 Jan;49(1))。同様に分子標的薬での肝癌治療患者において、皮下脂肪や骨格筋量の低下が予後に関連することを報告した (Cancers (Basel). 2019 Aug 19;11(8):1206.)。肝硬変患者における筋痙攣の頻度と薬物治療について、国内多施設と共同調査し、現状について明らかにした (Eur J Gastroenterol Hepatol. 2019 Dec;31(12))。また、栄養状態と肝疾患との関連については、分岐鎖アミノ酸を含む就寝前軽食や低亜鉛血症などの栄養状態が肝硬変の予後や肝癌発育に関連することを報告した(J Clin Med. 2020 Apr 3;9(4). Hepatol Res. 2019 Oct;49(10))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床研究においては、研究開始時データベースを早々に構築できたためコホート研究を行い、慢性肝疾患と骨格筋の関連について研究成果を論文化することが可能であった(当初の計画以上に進展している)。 また、日本肝臓学会のサルコペニア判定基準策定に関わる、日本の多施設共同研究で慢性肝疾患患者のサルコペニアの頻度・予後に及ぼす影響について論文化した。 一方、動物を用いた研究については、現在モデルを作製し本格始動した。
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今後の研究の推進方策 |
臨床研究は、慢性肝疾患患者の骨格筋量(あるいは力)減少に対する前向きの介入試験をすすめる。介入試験は、運動・栄養療法(薬物)を行う。薬物療法では、肝硬変患者で低下している分岐鎖アミノ酸および相対的欠乏とされているカルニチン製剤を用いる。短期から中期的には、骨格筋量(あるいは力)、肝機能、予後、酸化ストレスの改善効果を、長期的には予後改善効果について検討する。一方動物実験においては、肝硬変モデルマウスで得られたサンプル(肝臓、血清、骨格筋)における経時的な遺伝子発現の変化、蛋白質の相互作用・細胞内シグナルの変化について網羅的な解析(DNA microarray、抗体microarray、免疫染色、WB analysis、Real-time RT-PCR、myokine assay etc)を行い、肝筋相関を制御する候補分子をスクリーニングする。
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次年度使用額が生じた理由 |
来年度は基礎研究に詳細な実験のために費用が増加することが予想される。そのため、次年度への繰り越しが生じた。 主な支出は実験動物の管理と試薬の購入が考えられる。 その他、研究成果発表のため、学会参加旅費に充てられる。
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