研究課題/領域番号 |
19K08379
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
川島 麗 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (70392389)
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研究分担者 |
鎌田 弥生 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00410035)
高橋 美帆 同志社大学, 生命医科学部, 助教 (00446569)
藤田 朋恵 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20296510)
市川 尊文 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30245378)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミノ酸トランスポーター / 抗癌剤 / 消化管粘膜 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
抗癌剤投与による消化管傷害の要因としては、物理的刺激を除けば、免疫応答異常、粘膜防御機能の低下、腸内フローラの悪化などが考えられる。腸管粘膜炎発症にはアミノ酸動態が関与すると予想し、昨年度は粘膜炎症モデルを作成したが、本年度その5-FUモデルを使って、炎症背景を詳細に検討することとし、腸管内浸潤細胞の同定を試みた。過去の文献通り、CD3+CD4+T細胞の浸潤が認めれたが、サイトカインの細胞内染色は再現性のある差が得られなかった。これは実験手技的な検討が必要とされると判断し、来年度の課題とした。一方で、炎症組織のmRNA発現を見ることで炎症状態を判断した。IL-1b、IL-6、TNFa発現が上昇した。一方、IL-4、IL-10、IL-13は上昇しなかった。本実験系は、5-FUを経口で投与しており、物理的には口腔側が先行して接触すること、さらに、5-FUの薬理的感受性は回腸よりも空腸の方が高いことから(Saegusa Y)、本来であれば、回腸よりも空腸の方が重症となるはずである。しかしながら、このような組織損傷を引き起こしたモデルでの小腸局所において、IL-1b、IL-6、TNFaの上昇を伴う炎症は、小腸後半にいくにつれて大きくなる傾向にあった。この理由として、回腸は空腸に比べて、パイエル板などの免疫系器官が発達していることから、組織損傷に対する免疫応答性が比較的高く、IL-1bなどの急性炎症性タンパク質の産生亢進が顕著に認められたと言える。以上より、5-FU起因性腸管粘膜傷害はh1系サイトカインの発現を伴う炎症が特に回腸領域で顕著となるモデルであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は腸管の粘膜固有層細胞のサイトカイン分泌を計画していたが、再現性のあるデータが得られなかったことは進行に遅れが生じる原因であったものの、別の方法でモデル動物の炎症を捉えることが可能となり、結果遅れをとることなく進行した。また、オンラインとなった教育業務の空き時間を有効利用できたこともその理由の一つである。
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今後の研究の推進方策 |
モデル動物小腸におけるアミノ酸トランスポーター(LAT1、2、4F2hc)を遺伝子発現レベルおよびタンパク質発現レベルにて比較する。また、Caco2細胞または一次器官培養法にて、局所的なものかあるいは全身性の代謝が必要なのかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験方法の変更により、試薬および実験動物等の削減に繋がった。ただし、当初行うはずだった実験法を次年度に再チャレンジする予定であるため、その予算に充当する。
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