研究課題/領域番号 |
19K08380
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
久松 理一 杏林大学, 医学部, 教授 (60255437)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 腸内細菌叢 / 5-アミノサリチル酸 / 腸管免疫 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、5-アミノサリチル酸(5-ASA)投与によるマウス腸管microbiota変化の評価を再施行した。これまでと同様、4週齢のSPF環境下野生型C57BL/6マウスを購入後、8週齢までbedding transferによる腸管microbiota の均一化を図り、その後、5-ASA投与を開始した。5-ASAは粉末飼料に混ぜ、マウスの摂取量が臨床における投与量を想定したヒト (60kg)の4000 mg/日に相当する820 mg/kg/日を12週齢まで投与した。投与開始0週、2週、4週の糞便についてDNA抽出を行い、16S RNA gene amplicon sequencingによる解析を行った。前年度の結果では雌マウスにおいて経時的な細菌叢の変化を認めた一方で、雄マウスでは、0週時点での細菌叢の不均一さのため統 計学的評価は困難であった。しかし、今年度の再検討では、雄マウスにおいて細菌叢の均一化を達成し、雌と同様に5-ASAによる経時的変化を認めた。これらの知見から、細菌叢に性差はあるものの、5-ASA投与による腸管細菌叢の変化が雌雄ともに生じることが明らかとなった。さらに、5-ASAにより変化した糞便を無菌マウスに移植したときに、無治療群の糞便を移植した群とは異なる腸管粘膜および腸管リンパ節の免疫プロファイルを示すことを認めた。本モデルでは腸内細菌叢を移植したため、5-ASAの直接的な作用ではなく、腸内細菌叢を介した免疫機構の変化と考えられ、5-ASAにより変化した腸管microbiotaが宿主の腸管免疫機構に影響を及ぼすことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
5-ASAによる腸管細菌叢の変化の検討につき追試験を要したこととCOVID-19感染状況下で動物実験が予定よりも遅れたことにより、全体の進捗状況としては当初の計画よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
5-ASAによる腸管細菌叢の変化、細菌叢を介した免疫機構の変化を認めたため、当初の計画に沿い、これらの変化が、5-ASAの抗炎症作用の一つであるかについて、腸炎マウスモデルを用いて検討する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19感染拡大によりマウス実験が当初の予定よりもやや遅れていることが、採取した動物検体を用いた免疫学的解析、組織学的解析のスケジュールにも影響している。次年度にこれらの解析を進め、また予定していたマウス実験も合わせて行うことにより、次年度使用額および次年度助成金を使用する計画である。
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