研究課題
難治性炎症性疾患である潰瘍性大腸炎(UC)の病因・病態に腸内細菌叢の乱れが関与していることが報告されているが、UC患者の予後、特に治療経過に影響を及ぼす薬剤不耐との関連性を詳細に検討した研究はない。これまでわれわれはUCの基本治療薬である5-AS製剤不耐例では再燃例や入院例が多く予後に影響すること(Naganuma M et al 2020 J Gastroenterol)、および腸内細菌叢の相違により、5-ASA不耐症例が存在することを明らかにしてきた(Mizuno S, Naganuma M et al Intest Res 2020)。2020年度はUC疾患活動性や難治性(頻回再燃例)と腸内細菌叢の乱れや菌種の相違との関係について16S rRNA-sequencing法による細菌叢解析をおこなった。活動性については臨床的スコア高値でストレプトコッカス、フェカリバクテリウム、クロストリジウム属の増加、ビフィドバクテリウムの低下があることを確認された。今年度は活動性と細菌叢の客観的な関係を検討するために、臨床的寛解例において便中カルプロテクチン値を150μg/mgをカットオフ値にした際のカルプロテクチン高値群と低値群における細菌叢の相違を検討し、カルプロテクチン高値群でビフィドバクテリウムの低下が認められた。頻回再燃例および抗TNFα抗体製剤抵抗の既往がある難治例においてはShannon indexが非難治例に比べ低値であったが、菌種については一部の菌で傾向は見られるものの明らかな相違を確認することはできなかった。さらに臨床的寛解例における細菌叢と予後についても検討をおこない、臨床的再燃に寄与する2つの細菌叢の有意な変化が確認された。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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