研究課題/領域番号 |
19K08383
|
研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
小井戸 薫雄 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70266617)
|
研究分担者 |
伊藤 正紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80297366)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | WT1 / 樹状細胞 / ネオアンチゲン / PD-1 / Foxp3 / リンパ球 |
研究実績の概要 |
①高免疫原性の腫瘍抗原である「新規 WT1(Neo-WT1)」を標的とした樹状細胞ワクチン(Neo-WT1-DC)を開発し、臨床試験を実施した。Neo-WT1-DCは、WT1特異的CD4T細胞およびCD8T細胞を刺激することができるNeo-WT1ペプチドカクテルをパルスした樹状細胞ワクチンである。進行膵臓癌に対して、標準化学療法(GN療法:ゲムシタビン+アブラキサン)にNeo-WT1-DCを併用した臨床試験を実施した。最終目標数の10例のエントリーがすべて終了した。エントリーされた全例に対し、安全に治療を遂行することができた。臨床試験の結果、10例中7例が腫瘍縮小効果(PR)を認め、残りの3例はLong SDであった。また、7例がConversion Surgeryが可能となった。手術が可能となった7例に対して、手術標本を免疫組織化学的に解析した結果、リンパ球が高頻度に集簇し、PD-L1低発現の癌細胞が存在している症例は、治療経過が良好であった。現在、免疫モニタリングを詳細に実施するため、血液サンプルを解析中である。 ②新規開発したWT1ヘルパーペプチドは、WT1特異的CD4T細胞だけでなく、WT1特異的HLA-A2拘束性CD8T細胞も刺激することが可能であった(in vitro実験)。 ③切除不能進行膵臓癌(Stage IV)に対して、治療前にリキッドバイオプシーを行い、ネオアンチゲンを同定した。その後、候補ネオアンチゲンペプチドを合成し、樹状細胞にパルスした樹状細胞ワクチン(neoantigen-DC)に標準化学療法(GN療法)を併用した臨床試験を1例に対して実施した。 ④これまでに当院で切除可能であった膵臓癌術後の手術標本85例を用いて、免疫担当細胞を免疫組織化学的に検討をおこなった。その結果、①癌局所にリンパ球(CD3, CD4, CD8T細胞)の高密度集簇、②高頻度のPD-1発現リンパ球集簇、③低頻度のFoxp3発現リンパ球症例は、生命予後が優位に良好であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Neo-WT1-DCを用いた臨床試験は、全例エントリーが完了した。一方、neoantigen-DCを用いた臨床試験は、エントリーが1名にとどまっている。
|
今後の研究の推進方策 |
①「新規 WT1(Neo-WT1)」を標的とした樹状細胞ワクチンを併用した標準化学療法を実施した進行膵癌10例に関して、末梢血を用いた免疫モニタリングを完遂させる。
②「ネオアンチゲン」を標的とした樹状細胞ワクチンと標準化学療法の併用療法に関する臨床試験のエントリーを進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ネオアンチゲン-DCワクチンのエントリーが滞っているため。
|