近年、「胎児期における環境要因が何らかの形で記憶され、出生後のさまざまな疾患の罹患率に影響を与える可能性」、すなわちトランスジェネレーションが注目されているが、伝統的発酵食品を摂取する食生活が、トランスジェネレーションへいかなる影響を及ぼすかは不明である。 本研究では、日本の伝統的発酵食品であるふなずしより単離したプロバイオティクス株を親マウスに経口投与し、その親から得られた仔マウスの腸間膜リンパ節(における免疫細胞の変化を検討した。 その結果、プロバイオティクスを投与した親マウスでは、対照群に比しCD103陽性樹状細胞数が優位に増加していた。仔マウスにおいてはプロバイオティクス投与の親から得られた仔マウスのみが、対照群に比しCD103陽性樹状細胞数の優位な増加が認められた。さらに、β8インテグリン陽性CD103陽性樹状細胞数を検討したところ、プロバイオティクスを投与した親マウスでは、β8インテグリン陽性CD103陽性樹状細胞数が優位に増加していた。仔マウスにおいても、同様の結果が認められた。制御性T細胞数を検討したところ、プロバイオティクスを投与した親マウスでは、制御性T細胞数が優位に増加していた。仔マウス間においてはプロバイオティクス投与の親から得られた仔マウスのみが、対照群に比し制御性T細胞数の優位な増加が認められた。 さらに、得られた仔マウスに潰瘍性大腸炎モデルであるDSS水溶液の投与を行ったところ、プロバイオティクス投与の親から得られた仔マウスのみに有意な炎症スコアの減少が認められた。 以上より親マウスにプロバイオティクスを投与することで増加した免疫細胞は、その仔マウスにトランスジェネレーションされる可能性が示された。これは、妊娠中の発酵食品の摂取が世代を超えて炎症性疾患(IBD)などの予防に効果的である可能性を示唆している。
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