研究課題/領域番号 |
19K08385
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井上 淳 東北大学, 大学病院, 助教 (60455821)
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研究分担者 |
嘉数 英二 東北大学, 大学病院, 助教 (20509377)
岩田 朋晃 東北大学, 大学病院, 医員 (30803647)
二宮 匡史 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 助教 (70583938)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HBV / CD63 / Rab5B / 小胞輸送 |
研究実績の概要 |
B型肝炎ウイルス(HBV)の生活環における細胞内での輸送経路の解明を中心として、B型肝炎の病態理解と新規治療法開発の基盤となる成果をあげることを目的に、2年目の2020年度はHBVの粒子形成および放出における小胞輸送の解析を中心に研究を進めた。前年度に引き続き、エクソソームおよび多胞体の分子マーカーであるCD63に着目すると、エンベロープタンパクの一つであり感染に必要なLHBsがエンベロープ上に効率よく保持さえるためにCD63が必要であることが分かった。また、CD63はエンベロープタンパクのmRNAである2.4/2.1 kb mRNAの転写を抑制していることが分かり、CD63発現制御により感染性HBV粒子とエンベロープタンパクのみから形成される中空粒子のバランスが変化していた。これらの結果から、CD63およびそのLHBsとの相互作用は抗ウイルス療法のターゲットとなりうる可能性が考えられ、論文にまとめて報告した(Ninomiya M, Inoue J et al. Hepatol Comm 2021)。また以前にRabタンパク質ファミリーの中でRab5Bが特にHBV放出を制御していることを報告したが(Inoue J et al. J Virol 2019)、HBVが肝細胞に感染した際のRab5Bの発現について検討すると、培養細胞系ではその発現は有意に低下していることが分かった。肝生検組織を用いた検討では慢性肝炎患者においてRab5B発現量は血清HBV DNAと相関を認めており、病態理解の一助となる可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に予定していたHBV感染成立における小胞輸送の解析は遅れているが、HBV感染性粒子形成・放出における小胞輸送経路の解明についてはCD63を中心に検討を重ねて成果を論文にまとめることができた。また、HBV感染が小胞輸送システムに与える影響においてはHBV感染のRab5B発現に与える変化についてデータをまとめ、国際学会において発表を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
HBV感染成立における小胞輸送の解析を進めつつ、HBV感染性粒子形成・放出過程におけるCD63やそれに関わる分子についてさらに検討を深め、臨床応用の基盤となるようなデータの集積を目指す。また、HBV感染が与える小胞輸送の解析・臨床的意義の検討については患者検体を増やして種々の小胞輸送に関わる遺伝子発現などの検討を進める。感染性HBV粒子の定量法については当初の計画から遅れているが、引き続きデータの集積を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の計画を集中的に進めた影響により、新たな経費のかかる計画(HBV感染成立における小胞輸送の解析)に遅れが生じたため、次年度使用額が生じた。こちらを用いて次年度は同計画を進める予定である。
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