研究課題/領域番号 |
19K08387
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
多田 稔 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80302719)
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研究分担者 |
立石 敬介 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20396948)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 |
研究実績の概要 |
嚢胞性腫瘍である膵管内乳頭粘液性腫瘍(Intraductal papillary mucinous neoplasm: IPMN)が年率0.6%と一般の20倍と高い発癌リスクを有する膵癌高危険群であることを報告した。そのIPMNに関連する膵発癌様式には2通りあり、IPMN上皮が局所で悪性転化し浸潤癌化するIPMN由来浸潤癌と、IPMNとは別の場所の膵内に通常型膵癌と同様の浸潤癌を形成するIPMN併存膵癌である。IPMN由来浸潤癌と併存膵癌における発癌の分子機序や生物学的相違点に関しては未だ殆ど不明である。またIPMN併存膵癌が、いわゆる通常型膵管癌と同一の発癌形態であるのかどうかも明らかではない。いわゆるヒト通常型膵管癌にはKRAS,CDKN2A, TP53, SMAD4の”Big4”と呼ばれる遺伝子変異が高頻度に存在するが、IPMNではそれらの頻度は低く、一方で特異的な遺伝子異常GNAS変異が45-65%に存在する。これはIPMNが通常型膵癌とは異なる分子学的背景を持つことを明確に示唆している。過去にIPMN発癌の臨床疫学のみならず遺伝子変異やシグナル伝達活性化の違いなどについて報告したが、本研究では前向きの経過観察中に発癌したIPMN症例におけるIPMN非癌部上皮と癌部組織を用いて、グローバルなDNAメチル化およびヒストン修飾などのエピゲノムプロファイルを検討し、IPMN発癌におけるエピゲノムの重要性を明らかにする。さらには由来浸潤型と随伴型それぞれのエピゲノムプロファイルの変化をもとに、各々の発癌経路の特徴および関連するエピゲノム制御因子を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IPMNの経過観察中に膵発癌を認めた20症例の組織標本を用いて、これまでに免疫染色によるグローバルレベルでのDNAメチル化の比較を行った。免疫染色ではIPMNを組織別に low grade, high grade, 浸潤癌化病変の3群に分類し、シグナルの頻度と強度に応じてスコア化した。またIPMNの悪性化に伴ってKDM6BおよびC/EBPaの発現が低下するかを調べるため免疫染色にて解析した。
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今後の研究の推進方策 |
IPMN進行に伴うDNAメチル化レベルの変化の分子 機構を調べるために非癌部IPMNと癌部から抽出したRNAを用いてDNAメチル化酵素DNMT1, DNMT3A DNMT3Bおよび脱メチル化酵素TET1, TET2, TET3の発現を定量的PCRで比較する。さらにIPMN由来浸潤性膵発癌と随伴性膵発癌の間での相違点について検討する。
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