研究実績の概要 |
エピゲノムとは、DNAの配列変化を伴わずに遺伝子転写を制御するDNAメチル化やヒストン修飾の総称である。本研究では、IPMNに関連する2通りの膵発癌様式の比較において、両者にとって重要でありかつ、各々を層別化しうるエピゲノム制御プロファイルを明らかにする. 充実性腫瘍である通常型膵管癌は膵上皮内腫瘍性病変(pancreatic intraepithelial .neoplasia: PanIN)からの多段階的発癌モデルが提唱されているが、一方で嚢胞性腫瘍であるIPMNから発生する膵癌も存在する。我々はIPMNが年率0.6%と一般の20倍と高い発癌リスクを有する膵癌高危険群であることを報告した(Clin Gastroenterol Hepatol, 2006;4(10):1265-70)。そのIPMNに関連する膵発癌様式には2通りあり、IPMN上皮が局所で悪性転化し浸潤癌化するIPMN由来浸潤癌と、IPMNとは別の場所の膵内に通常型膵癌と同様の浸潤癌を形成するIPMN併存膵癌である(Pancreas, 2011;40(4):571-80)。重要なことに、IPMN由来浸潤癌と併存膵癌における発癌の分子機序や生物学的相違点に関しては未だ殆ど不明である。またIPMN併存膵癌が、いわゆる通常型膵管癌と同一の発癌形態であるのかどうかも明らかではない。通常型膵管癌にはKRAS, CDKN2A, TP53, SMAD4の”Big4”と呼ばれる遺伝子変異が高頻度に存在するが、一方IPMNでは特異的な遺伝子異常GNAS変異が45-65%に存在する。これはIPMNが通常型膵癌とは異なる分子学的背景を持つことを示唆している。
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