研究課題/領域番号 |
19K08389
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
八木 一芳 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (20220121)
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研究分担者 |
寺井 崇二 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00332809)
橋本 哲 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (10768667)
土屋 淳紀 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (70464005)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胃がん / 幽門腺化生 / 腸上皮化生 / CDX2 / ピロリ菌 |
研究実績の概要 |
42例の内視鏡切除した粘膜内胃癌の連続切片を用いて、MUC6、MUC5AC、CDX2、MUC2、CD10、Ki67の免疫染色を行った。その結果、胃底腺の腺底部にMUC&腺管が出現し、これが幽門腺化生となることが判明した。さらにその幽門腺化生の口側にCDX2が発現し、その陽性細胞からMUC6細胞からMUC2陽性細胞へ変化し、幽門腺化生から腸上皮化生が発生していくのを細胞レベルで確認できた。それらの細胞的レベルでの化生を認識したうえで胃癌発生部を観察してみた。するとMUC6陽性腺管の口側にCDX2が発現するがMUC2が出現せず、そのままMUC6陽性の細胞が観察される部位が存在した。転写因子の遺伝的情報を無視した細胞群である。これらが癌であった。癌の73%はMUC6陽性、95%の癌部はCDX2陽性、40%はMUC6腺管から連続的で癌部よりCDX2陽性となっているのを確認できた。以上より腸上皮化生も癌もMUC6より発生し、その際にCDX2が関与していることが推測された。3例の粘膜内癌の癌部、腸上皮化生、幽門腺化生の部分をレーザーイクロダイゼクションで剥離し、DNA解析を行ったところ、2例は癌と腸上皮化生のDNAの変異はまったくことなり、一方、両者とも幽門腺化生から発生しているという我々の推測と同じであった。1例は癌は腸上皮化生と類似し、腸上皮化生からの発生も否定できなかった。 この結果は、Yagi K, et al. Pyloric-gland metaplasia may be an origin of cancer and intestinal metaplasia with possible CDX2 expression. Gastroenterology Report, 2020,1-4.としてpublishされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
免疫染色から化生の細胞学的視点の解明を考察でき、そこから癌の発生に対しても考察を得れた。さらにDNA解析で遺伝子的にその裏付けを取れた。腸上皮化生が発生した胃から胃癌が発生しやすいことより、腸上皮化生から胃癌が発生するというのが世界の一般的な考えであるが、そうでなくCDX2という腸型の転写因子が関与していることがわかった。 癌の発生機序について新しい考え方を呈示することができた。 さらにこの転写因子が一般的には腸上皮化生を引き起こすが、一部の細胞には癌化を引き起こすその機序を解明したいと考えている。 また除菌後胃癌には癌と共に非癌上皮が表層にモザイクに発生しているが、その発生機序も今後検討したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
転写因子が腸上皮化生を引き起こすが一部の細胞には癌化を引き起こすその機序を解明したいと考えている。 また除菌後胃癌には癌と共に非癌上皮が表層にモザイクに発生しているが、その発生機序も今後検討したいと考えている。 さらにバレット癌も腸上皮化生との関係が言及されている。しかし本邦のshort segment Barret esophagusは腸上皮化生を伴っていないことが多い。しかし癌部はほとんどCDX2陽性である。最初に発現したCDX2発現部がそのまま癌化すればこのように腸上皮化生を有さないバレット癌発生という現象は起こりうる。我々の理論はこのバレット癌発生研究にもつながる考えであり、バレット癌の発生理論へ発展させることも検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナで国際学会出席が困難になっていること。さらに症例を増やし、免疫染色などを増やし検討する予定です。
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