研究実績の概要 |
H.pylori感染による慢性胃炎の進展メカニズムおよび腸上皮化生発生を免疫組織を用いて細胞学的レベルで解明しえた。さらにMUC6腺管からCDX2発現により通常は腸上皮化生が発生するが、一部は胃癌が発生することも免疫組織化学およびレーザーマイクロダイゼクションを用いた遺伝子解析で確認しえた。 その内容はYagi K, Tsuchiya A, et al. Pyloric-gland metaplasia may be an origin of cancer and intestinal metaplasia with possible CDX2. Gastroenterology Report, 2020, 1-4にPublishされている。さらに第65回日本内科学会信越支部生涯教育講演会で報告した。その意義は慢性胃炎および腸上皮化生が胃癌の発生に強く関わっていることは疫学的には知られているが、それを生物学的に解明した点である。H.pylori感染により胃底腺の主細胞はMUC6陽性細胞に先祖返りし、幽門腺化生とされるMUC6陽性腺管へ変化する。さらにH.pyloriからの攻撃をかわすためにCDX2を発現し、腸型の細胞、すなわち腸上皮化生へ変化する。その際に一部は癌化することがわかった。遺伝子解析で胃癌は腸上皮化生ではなく幽門腺化生由来のものも多いことも確認し得た。また腸上皮化生の発生した胃に癌が発生しやすいのはCDX2の発現が癌化に強く関与していることより説明できた。以上より臨床で観察できる胃癌発生現象が生物学的に理解できるようになった。
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