研究課題/領域番号 |
19K08393
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松原 淳一 京都大学, 医学研究科, 特定講師 (40782371)
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研究分担者 |
岩田 浩明 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (40613328)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 大腸癌 / CDKN3 / 抗癌剤 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、申請者の最近の研究で明らかとなったE2F4による殺細胞性抗癌剤治療の耐性メカニズムの一つとしてCDKN3に着目し、大腸癌細胞でCDKN3を阻害することの生物学的意義を検証し、新規抗癌剤としてのCDKN3阻害剤を開発することである。 我々はヒト大腸癌手術検体を重度免疫不全マウスの皮下に移植し、新たに異種移植腫瘍片腫瘍(PDX腫瘍)マウスモデルを確立した。この前臨床マウスモデルを用いることで、ヒトでの臨床効果を実験段階で再現することが可能と考えられる。 また、CDKN3を完全ノックアウトした癌細胞株の作成を開始した。CRISPR-Cas9という、ゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができる新しい遺伝子改変技術を用いて癌細胞株を作成している。この手法を用いることで、より厳密にCDKN3遺伝子の癌細胞における生物学的意義を明らかにすることができると考えられ、本研究の推進にとって非常に重要である。また、癌細胞株を用いてCDKN3阻害剤による抗癌剤治療効果の増強効果を検討することができれば、迅速な実験系の評価及びCDKN3阻害剤の開発のスピードアップを実現することができると期待している。 CDKN3の生物学的意義については多くの固形癌において共有されている可能性があり、それらの癌種においても殺細胞性抗癌剤に対する治療抵抗性の克服が実現されれば、多くの癌患者の治療成績向上が達成される。そこで、我々の研究室で以前より研究に取り組んでいる食道癌についても、CDKN3阻害による抗癌剤感受性の変化を検証する取り組みを開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書に記載した「重度免疫不全マウスを用いた新たな異種移植腫瘍片腫瘍(PDX腫瘍)マウスモデルの確立」は達成できた。 一方で、in silico解析にはまだ進めていないことから、「やや遅れている」という総合評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、我々が確立したマウスモデルを利用したin vivo抗癌剤実験においてCDKN3ノックダウンの抗癌剤感受性へ与える影響を確認する。 in silico解析についても予定通り進めていく。そこで同定されたCDKN3阻害作用を有する新しい化合物について、その生物学的薬理作用を確認するために、新たに実験系を確立し評価する。 そのCDKN3阻害剤が殺細胞性抗癌剤の治療効果増強に実際に寄与するかどうかを、本研究で確立した大腸癌前臨床PDXマウスモデルで検証する。また、CDKN3ノックダウン癌細胞と野生型癌細胞との比較解析で、CDKN3の下流遺伝子を同定する。
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