研究課題
原因不明の難治性疾患である炎症性腸疾患の発症や増悪に、食事抗原、精神的ストレス、抑うつ状態や気候変化といった環境因子(エクスポソーム)が関わると報告されているが、その詳細はいまだ不明である。我々はこれまで糖鎖免疫の見地から炎症性腸疾患の発症機構を検討してきたが、今回、エクスポソームが糖鎖免疫を介して腸炎発症や増悪に関わるのではないかとの仮説を立て、その機序および制御機構の解明を目指すことを目的として本研究を立案した。特に、精神状態に関わるエクスポソームが腸内環境との糖鎖免疫学的クロストークを介して腸炎を制御している可能性につき、患者検体やマウス実験腸炎モデルを用いた基礎的検討を行う。また、患者検体の検討結果と疾患経過、臨床背景との関連につき比較検討を行う。これらにより、エクスポソームの変化による炎症性腸疾患発症・増悪に関わる病態解明を目指す。当該年度は、野生型マウスにストレス負荷下に実験腸炎モデルを作成し、腸炎増悪の有無を確認するとともに、ストレス関連因子や腸管上皮細胞、粘膜固有層リンパ球における炎症性サイトカインの産生を検討し、腸炎増悪に精神的ストレスが関わる機序について基礎的な検討を行った。また、エクスポソームの変化が炎症性腸疾患患者の病態に及ぼす影響について、生検組織や便検体等の臨床検体を用いて、その臨床経過と比較検討するべく準備を進めるとともに、ストレス増悪を自覚する患者における疾患活動性と抑うつ関連スコアとの関連や、炎症性腸疾患患者における腸内細菌叢の季節性変化につき検討を行った。今後さらに詳細な検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
基礎検討および臨床検討ともに順調に研究が進んでいる。
これまでの研究を更に推進し、ストレス・腸炎モデルにおける糖鎖免疫の関わりについて基礎的な検討を進めていく。また臨床検体の採取も進めていき、ストレスと疾患増悪に関わる臨床背景因子の関連について精査していく。
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J Gastroenterol Hepatol.
巻: - ページ: -
10.1111/jgh.14933
10.1111/jgh.15067
巻: 34(10) ページ: 1743
10.1111/jgh.14670