研究課題
大腸内視鏡を用いて健常者、大腸腫瘍・大腸がん患者より採取した組織、便および粘膜洗浄液からDNAおよびRNAを抽出した。上記で採取した早期大腸低分化腺がん2検体、早期大腸高分化腺がん2検体および正常組織2検体を用いて、Illumina TruSeq RNA AccessによるRNAシークエンス解析を行い、高分化腺がんおよび正常組織と比較し低分化腺がんにおいて発現に差が見られる遺伝子Aを抽出した。内視鏡的あるいは外科的切除された大腸がん組織30症例を対象に遺伝子Aの発現を免疫組織化学染色法(IHC)で解析したところ、浸潤先進部に低分化成分を有する症例の約92%で遺伝子Aが陽性であった。本結果の再現性を確認するため、前記とは異なる大腸がん組織50症例を用いてIHCによる解析を施行したが同様の結果が得られた。現在、遺伝子Aと臨床的背景因子との関連性も確認中である。次に、遺伝子Aの過剰発現またはノックダウンした大腸がん細胞株を用いてcell viability assayによる腫瘍増殖能評価を行ったが、腫瘍増殖は見られなかった。また、同様の細胞株を用いてmigration assay、invasion assayによる遊走・浸潤能評価を行ったところ、遺伝子A過剰発現大腸がん細胞株で遊走・浸潤能が促進され、遺伝子Aノックダウン大腸がん細胞株で遊走・浸潤能が抑制された。現在、同様の実験系で増殖、遊走・浸潤能に与える影響について再現性を確認中である。
2: おおむね順調に進展している
多数の大腸腫瘍および大腸がんからDNAおよびRNAを順調に採取できており、また同定した遺伝子のIHCによる発現解析や機能解析を行っている。
大腸がん細胞株を用いて同定した遺伝子の更なる機能解析を行う。遺伝子Aの過剰発現あるいはノックダウンが増殖、遊走・浸潤能に与える影響について再現性を確認する。また、がん細胞を免疫不全マウスに移植して、in vivo腫瘍形成能および転移能に与える影響を解析する。遺伝子Aは大腸がん組織の浸潤先進部に特異的に発現していることから、このモデルをコラーゲンゲルや三次元細胞培養担体を用いた三次元共培養系で再現できるか検証する。
今年度の必要物品に関しては、当講座に常備してあるもので対応できた。次年度以降は、更なる機能解析および動物実験等を施行予定のため、今年度分も併せた物品費が必要と考える。
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