研究課題/領域番号 |
19K08401
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
山本 博徳 自治医科大学, 医学部, 教授 (10311937)
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研究分担者 |
矢野 智則 自治医科大学, 医学部, 准教授 (30438634)
三浦 光一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (90375238)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クローン病 / 小腸細菌叢 / 粘膜関連菌 / Escherichia coli / Ruminococcus gnavus / ダブルバルーン小腸内視鏡 |
研究実績の概要 |
本研究は本学倫理委員会の承認を得られたものである。研究への同意が得られたクローン病患者27例と対照患者(小腸疾患のない患者またはクローン病以外の小腸疾患を有する患者)17例からダブルバルーン小腸内視鏡を用いて小腸粘膜サンプル(粘膜生検または粘膜擦過サンプル)を採取した。サンプルから溶菌法により細菌DNAを抽出し、Illumina MiSeqを用いて細菌叢組成を解析したところ、合計2,260 のoperational taxonomic units (OTUs)が得られた。あわせて一部の無作為の症例から検査前日に糞便、内視鏡時に小腸液を採取し、同様に菌叢解析を行なった。 統計学的比較により、2群間に有意な違いが見られた(Bray-Curtis distanceに基づく比較)。Phylum(門)レベルではProteobacteria門とBacteroidetes門がクローン病に多く、family(科)レベルではEnterobacteriaceae科、Ruminococcaceae科、Bacteroidaceae科がクローン病に多く認められた。逆にFirmicutes 門、Streptococcaceae科はクローン病で少なかった。 さらに多重検定(FDR)とLEfSeを用いた菌種レベルでの比較解析ではEscherichia coli、Ruminococcus gnavusをはじめとする18菌種がクローン病の小腸粘膜に多く認められた。一方、Escherichia coli、Ruminococcus gnavusは小腸液や糞便細菌叢の解析では2群間に有意差は見られなかった。対照患者の糞便ではFaecalibacterium prausnitziiが多く存在し、既報に合致した。 次に、クローン病患者から得られた小腸サンプルを用いて好気または嫌気環境下に網羅的に細菌単離を行い、クローン病関連菌18菌種のうちEscherichia coli、Ruminococcus gnavus を含む9菌種を単離し得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標のうち、目標①小腸細菌の解析によりクローン病の病態に関わる細菌の特定を終了し終えた。さらに、そのうちEscherichia coli、Ruminococcus gnavus を含む9菌種をクローン病の小腸サンプルから単離培養し得た。
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今後の研究の推進方策 |
まず、目標②特定されたクローン病関連菌が腸管免疫系に影響を与えるか否かについて、クローン病サンプルから単離した9菌種について、無菌マウスへ定着させることによりノトバイオートマウスを作成し、腸管免疫細胞への影響を解析しているところである。さらに、9種類の細菌のうちどの細菌が最も宿主への影響を示すか明らかにする。これによりある特定の細菌が抽出された場合に、その働きが菌種依存的か菌株依存的か明らかにする。 また、目標③腸炎を引き起こすか否かについては、無菌化IL-10ノックアウトマウスまたは抗IL-10R抗体を腹腔内投与した無菌化野生型マウスを用いる予定である。腸炎誘導の評価として、組織学的評価、血中LPS-binding protein (LBP)濃度、腸上皮の遺伝子発現(Tnfを含む炎症性サイトカイン、tight junction等)を行うことにより、クローン病由来菌の腸炎誘導能を評価する。 目標④TNFSF15/DR3シグナルの関与の検証については、まず無菌マウスおよび腸炎モデルマウスを用いた実験の追加解析としてTnfsf15およびDr3の遺伝子発現を解析する予定である。
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