がん間質は、がん細胞と並行に線状集積した細胞外マトリックス (ECM) により正常組織の間質に比べ組織硬度が増している。この間質の構成細胞の中でも「がん関連線維芽細胞 (carcinoma-associated fibroblast:CAF)」が、強いがん細胞増殖促進作用を持つことが認識されている。申請者らは近年、活性酸素やTGF-βにより発現誘導される細胞接着斑アダプター分子 Hic-5 (hydrogen peroxide-inducible clone-5) が、がん間質のCAFに高発現しECMリモデリング制御に関与していることを見出した。そこで本研究では間質の豊富な膵がんに着目し、Hic-5 のがん間質形質制御を介した膵がん発症への寄与について膵がん発症マウスモデルを用いて検討を行った。最終年度は、Hic-5によるがん組織の細胞外マトリックス分子構造変化を捉えるため、マトリックス三次元構造解析、高速フーリエ変換によるがん間質構造の解析により、Hic-5欠損によるがん間質構造の変化が示された。本研究から、膵がん発症過程におけるHic-5のがん間質構造制御への関与が見出された。
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