研究実績の概要 |
我々はこれまでにウイルス性肝硬変を対象としたCD34陽性細胞移植による肝再生治療に関する基礎研究から臨床研究まで行い、治療効果を報告・検証してきた。今後は近年増加傾向にあるNASH肝硬変を対象とした基礎的検討が必要と考え、研究を進めている。 まず、NASH肝硬変に対する細胞療法としてヒト臨床試験まで進んでいる細胞材料、間葉系幹細胞(MSC)を治療コントロールとするため、マウス脂肪由来MSCを培養作製した。作製したMSCはFCMによる解析にてCD44,CD73,CD90,CD105が陽性、CD24,CD31,CD45が陰性であり、MSCであることを確認できた。食餌性NASH誘導モデルマウスはコリン欠乏メチオニン減量60%脂肪食(CDAHFD60)を給餌させて作製し、モデル1)では12週間、モデル2)では20週間給餌させた。CD34陽性細胞移植は効果判定する4週前に脾注し移植した。肝線維化の改善効果(評価方法:アザン染色、免疫組織化学染色[αSMA,I型コラーゲン]、リアルタイムPCR法[Col1a1,Acta2,TGFb,Timp1])について、モデル1)において無治療群と比較し、単回移植では有意差を認めなかったが、複数回移植により有意差を認める治療効果を得た。モデル2)において単回・複数回移植、いずれの移植回数においても有意な治療効果を認めた。また肝脂肪の改善効果についてOil-Red染色を行い評価したが、両モデルにおいて肝臓脂質蓄積量に大きな変化は認めなかった。
|