研究課題
自然免疫関連分子NOD1欠損マウスの胃では胃粘膜萎縮が認められたことから、NOD1が胃粘膜の老化を直接的に制御していると考え、検討を行った。まず、野生型マウスにおいて、若年および老年マウス胃からオルガノイドを作成し、比較したところ、老年マウス胃から作成したオルガノイドは、若年マウス胃から作成したものよりもオルガノイド形成数は多く、細胞増殖能も高いという意外な結果が得られた。老年マウス胃オルガノイドでは若年マウス胃オルガノイドに比してWntシグナル伝達系が活性化していること、Wntシグナル標的遺伝子である転写因子Tbx3の発現が亢進していることが確認され、Tbx3活性化とその結果としての細胞老化の回避が、細胞増殖能亢進の原因となっている可能性が示唆された。一方、Tbx3の発現誘導は、加齢マウス胃においてWnt抑制的に作用する因子がメチル化されていたことから、加齢に伴うメチル化によってWntシグナルが活性化され、Wnt標的遺伝子であるTbx3の発現が誘導されるという経路が働いていることが考えられた。マウス胃オルガノイドから得られたこれらの結果を、ヒトにおいても確認するべくヒト胃生検検体および胃内視鏡的粘膜下層剥離術標本を用いて検討したところ、正常胃粘膜から萎縮性胃炎、胃癌と進行するに伴い、TBX3の発現は増強することが確認された。さらに、患者の年齢とTBX3の発現との関連を検討したところ、年齢が高くなるに従いTBX3の発現は増強し、両者の間には正の相関が認められた。上記の若年および加齢マウス胃オルガノイドから得られた結果を元に、野生型およびNOD1欠損マウス胃オルガノイドでも検討を行った。NOD1欠損マウス胃オルガノイドでは、加齢マウス胃オルガノイドと同様、オルガノイド形成数が多いことが確認され、NOD1が老化を抑制している可能性が考えられた。
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