研究実績の概要 |
肝細胞癌(肝癌)は最も予後不良な癌のひとつである. 癌化した肝細胞は細胞膜上に自然免疫関連分子MICAを発現し, NK細胞にNKG2D受容体を介して認識され排除される. 肝癌細胞は自身の生存のためにシェダーゼを発現し細胞膜上のMICAを切断し失活させる. 応募者はこれまで前臨床研究として大規模化合物ライブラリをスクリーニングし, 複数のMICA発現増強薬およびMICAシェダーゼ阻害薬を同定してきた. その多くは他疾患の既知の治療薬であり, 薬剤再配置による新規肝癌治療薬として開発の実現可能性が高い化合物であった. 今回我々は健常人、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌のヒト血清中のMICA濃度をELISA法により測定した。また大規模化合物ライブラリのスクリーニングの結果新たなMICA発現増強薬を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
レポーターシステム(R&D systems社)による阻害薬スクリーニングを行う. 3.新規候補薬のシェダーゼ阻害効果の確認とMICAの評価:肝癌細胞株を, ヒットした化合物(以下「新規候補薬」)で処理し1, シェダーゼの阻害効果およびMICAの切断回避効果を1, シェダーゼmRNAおよび蛋白, 2. 培養上清中の可溶型MICA蛋白および膜型MICA発現量, でそれぞれ評価をする.新規候補薬の濃度を対数でふった系で濃度依存性の評価を行う. 4.In vitro自然免疫モデルによる新規候補薬の抗腫瘍効果の評価: 肝癌細胞株とNK細胞株との共培養の実験系をin vitro自然免疫モデルとして確立した (Goto et al. Sci Rep. 2017). 肝癌細胞株を新規候補薬で処理したのちNK細胞株と共培養し, 上清中のLDHを肝癌細胞株障害の指標として測定する. 5.腫瘍移植マウスを用いた新規候補薬の腫瘍縮小効果の評価: 肝癌細胞株を超免疫不全マウスNSGに皮下注射し(1×106個/個体), 正常ドナーマウスからNK細胞を経静脈的に移植(2×106個/個体)する. 1. DMSO(陰性対照), 2. 新規候補薬, 3. 抗NKG2D抗体(1mg/kg, 陽性対照), 4. 新規候補薬および抗NKG2D抗体(シェダーゼ阻害効果のキャンセル実験)を投与し0-24日目まであらかじめ定めた経過日に, 生着した腫瘍径を計測する.
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