これまでに胆管周囲付属腺(PBG)の胆管幹細胞としての可能性を解析する過程で、胆管付属腺の中でも十二指腸乳頭部に存在する胆管付属腺細胞が、より胆管幹細胞として機能している可能性を見出していた。さらに十二指腸胆管付属腺ではWntシグナルが特異的に活性化しており、その標的遺伝子であるAxin2を発現している細胞の細胞系譜解析をマウスを用いて行った結果、同細胞集団は胆管上皮幹細胞として機能していると同時に、十二指腸乳頭部癌起源細胞となっていることを突き止めた。そこで次に乳頭部特異的なWnt活性化ニッチがどのように形成されているのかを検討したところ、乳頭部をとりまくaSMA陽性Oddi括約筋細胞および筋線維芽細胞がWnt活性化因子R-spondin3(Rspo3)を強く発現していることがわかった。そこで現在平滑筋細胞特異的にRspo3をノックアウトしたマウスを作製し、解析中である。またWnt活性化阻害剤を投与することで乳頭部癌の発症を著明に抑制できたことから、乳頭部胆管付属腺特異的なWnt活性化ニッチは乳頭部癌の治療標的として有望な可能性が示唆された。
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