研究課題
本研究では、大腸がんの前がん病変であるポリープや粘膜内がんのような小さい病変に局在する細菌の機能を定量的に解析することを目的として、大腸内視鏡生検検体を用いたメタゲノム・メタトランスクリプトーム解析の方法論確立のためのパイロット研究を行う。2021年度は、国立がん研究センターで大腸内視鏡下生検により収集済みの9被験者について、回腸末端、盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸などから、腫瘍部位と正常粘膜の合計59検体のRNA-Seqデータを取得した。データ取得には細菌由来RNAの抽出のための特別な処理は行わなかったため、腸内細菌画分の割合は~0.01%のみであった。NCBI RefSeqやGTDB release95をデータベースとし、kraken2を用いて細菌の系統組成を算出した結果、約半数の検体ではCutibacterium acnesなどヒト皮膚常在菌が高い割合を示していたが、検体によってはKlebsiella pneumoniaeなどの日和見菌が高い割合を示していた。
3: やや遅れている
大腸内視鏡生検のメタトランスクリプトーム解析は世界的にも前例がほとんどないため、細菌由来RNA抽出のプロトコル作成に時間がかかった。
2022年度は、現在までに取得済みの大腸内視鏡生検から細菌由来のRNAを抽出するプロトコルを構築する。大腸内視鏡生検のメタトランスクリプトーム解析は世界的にも前例がほとんどないため、便検体のメタトランスクリプトームに使用されたプロトコルなどを参考にする。次に、予備実験として、希少性の低い材料でRNA抽出プロトコルを検証する。最後に、得られた細菌由来RNAからシーケンスライブラリーを作成し、次世代シーケンサで配列決定をした後、細菌の系統組成と遺伝子組成を算出する。
理由:2021年度に開始予定であった実験を翌年度以降に変更したため。使用計画:2021年度に実施予定の実験の試薬を購入する、シーケンスを外注する。
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mSystems
巻: 7 ページ: e0001822
10.1128/msystems.00018-22
実験医学
巻: 第39巻 ページ: 2527-2531