研究実績の概要 |
膵癌の治療選択肢は限られており予後不良である。免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬の登場により予後改善を認めた悪性腫瘍があるものの膵癌ではこれらの薬剤の奏効率は低く、個々の遺伝子プロファイルを得たうえで治療薬を選択する個別化医療が将来重要である。方法は以下のとおりである。膵癌に対してEUS-FNAを施行した139症例(Stage I,II/III,IV=65/74例)を対象とし、ドライバー遺伝子と治療標的となりうる遺伝子異常、マイクロサテライト領域合わせて77遺伝子を対象とする遺伝子パネルを作成し、EUS-FNAのFFPE検体より抽出したDNAを用い、次世代シークエンス解析した。以下の3点について検討した。検討1:網羅的遺伝子解析が可能であった症例の割合と遺伝子解析の結果。検討2:分子標的薬の治療標的となりうる遺伝子異常の同定。検討3:シークエンスデータを用いた膵癌のMSI解析。これらの結果、KRAS (80%), TP53 (56%), SMAD4 (18%), RET(18%), SMO (16%)に遺伝子異常が見られ、1症例当たりの遺伝子変異/Copy number異常数は平均3.6/1.4個であった。FDAで認可されている分子標的薬のマーカーとなる遺伝子異常は51遺伝子異常25症例(18%)に認め、実用可能な薬剤のマーカーまで含めると63遺伝子異常27症例(19%)に認めた。また、今回使用した遺伝子パネル内にマイクロサテライト領域が平均18か所認められたが、シークエンスリード中のマイクロサテライト領域の異常は認められなかった。膵癌患者から治療前に得られるEUS-FNA検体(FFPE)を次世代シークエンサーにて解析し、治療標的遺伝子同定の可能性を模索し、分子標的薬の効果が見込まれる症例があることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度、膵癌に対してEUS-FNAを施行した139症例(Stage I,II/III,IV=65/74例)を対象とした遺伝子解析を行った。ドライバー遺伝子と治療標的となりうる遺伝子異常、マイクロサテライト領域合わせて77遺伝子を対象とする遺伝子パネルを作成し、EUS-FNAのFFPE検体より抽出したDNAを用い、次世代シークエンス解析した。結果、EUS-FNAのFFPEサンプルから平均30ngのDNAが得られ、13例は測定感度以下であった。標的遺伝子は130例(94%)で増幅され次世代シークエンスを行うことが可能であった。得られた遺伝子異常は多い順にKRAS (80%), TP53 (56%), SMAD4 (18%), RET(18%), SMO (16%)であった。1症例当たりの遺伝子変異/Copy number異常数は平均3.6/1.4個であった。また、FDAで認可されている分子標的薬のマーカーとなる遺伝子異常は51遺伝子異常25症例(18%)に認め、実用可能な薬剤のマーカーまで含めると63遺伝子異常27症例(19%)に認めた。さらに、今回使用した遺伝子パネル内にマイクロサテライト領域が平均18か所認められたが、シークエンスリード中のマイクロサテライト領域の異常は認められなかった。
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