本研究の目的は、1)肝癌で産生されている、免疫グロブリン糖鎖のガラクトースの低下、及び非癌肝細胞で産生されている糖タンパクの3分岐糖鎖を上昇させる物質を同定し、2)これらが癌の進行・転移にどのようにかかわっているかを明らかとする。そして3)これらの糖鎖変化をもたらす物質をターゲットとした肝癌の診断・予後予測、そして治療の可能性を探索することである。 今までに94人の肝細胞がん患者と背景を合わせた94人の健常者血清において、6種類のIgG結合糖鎖を同定し、これらの糖鎖のうちガラクトース非結合糖鎖が低下していることを確認していた。この理由の検索過程で、リンパ球中(NAMLWA)のガラクトース転移酵素(B4GALT3)が、肝癌細胞株(Huh7)の培養上清添加によって低下することを確認した。培養上清中の責任物質のついては、血清分画によりmiRが疑われたため、ターゲットをmiRに絞り検討を行った。Huh7細胞の培養上清中には308個のmiRが検出されたが、その中でB4GALT3に結合するmiR27b-3pがリンパ球中のB4GALT3発現を低下させていることが判明した。免疫グロブリンのガラクトースの変化は癌種を超えた現象であるため、同時に様々な癌種での、免疫グロブリン結合糖鎖のガラクトース比率と患者データとを比較し、臨床的有用性について検討している。
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