研究実績の概要 |
我が国では肝癌によって毎年約3.5万人が死亡しており、肝炎ウイルス対策などの一次予防の確立や癌治療法の進歩によってその死亡者数はやっと減少に転じた。しかしながら、ウイルス駆除後の発癌症例も近年多くみられ、さらに難治進行癌に対する治療法はいまだ確立せずに予後は悪い。癌組織では抗癌剤の治療によってばかりではなく、局所の低酸素やストレス反応などによって、病理学的に多くの細胞死が観察される。本研究では、細胞死を介した癌化・進展についてのメカニズムの解明を目的に、抗癌剤、分子標的薬等によって起こる細胞死、腫瘍中心部などでよくみられる血流障害による細胞死などによって、残存する癌細胞が幹細胞化または分化転換を介して悪性化の方向に転換するという仮説のもと、以下の実験を行っている。いくつかの肝細胞癌細胞株(HepG2, Hep3B, Huh7)に対して、5-FU, Lenvatinib, および熱刺激を用いて、さまざまな細胞死を起こさせ、その抽出液を準備した。既知の癌幹細胞マーカーであるCD44およびE-cadherinをマーカーに癌幹細胞化をモニターした。その結果、5-FUにより処理した抽出液をHep3Bに投与すると、CD44の軽度の増加が観察された。In vivoの解析のため、マウス移植モデルを用いた腫瘍化能にて行ったが、腫瘍増殖については変化がなかった。一過性のCD44の増加のメカニズムについて検討を行なったところ、活性酸素(ROS)を介したJNK活性化によることが示唆された。
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