研究課題/領域番号 |
19K08429
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
及川 恒一 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (20514491)
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研究分担者 |
吉田 清嗣 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (70345312)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝癌 / 分化 / がん幹細胞 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、1.ヒト肝癌組織において癌部では非癌部と比べ、リン酸化酵素であるDYRK2の発現が大きく低下しており、かつDYRK2低発現症例は予後不良であること、肝癌細胞株では正常肝細胞よりDYRK2が低発現であり、その強制発現及びknockdown機能解析から 2.DYRK2がin vitroにおいて腫瘍細胞増殖抑制やapoptosisを誘導すること 3.ヒト肝癌細胞株を免疫不全マウスに移植したxenograft担癌マウスにおいて、DYRK2強制発現(adenovirusによる遺伝子導入)が、in vitroのみならずin vivoでも細胞増殖抑制とapoptosis誘導を介した腫瘍縮小効果を持ち将来的な新規治療に有用となる可能性を見出した。以上の結果をまとめて学術雑誌(査読あり)に投稿し採択され掲載となった(Yokoyama-Mashima S et al. Forced expression of DYRK2 exerts anti-tumor effects via apoptotic induction in liver cancer. Cancer Lett. 451:100-109,2019) 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の結果をふまえ、我々は現在、肝癌における抗癌剤治療抵抗性へのDYRK family遺伝子の影響について解析を行っている。抗癌剤に対する治療抵抗性を解析するにあたって、ヒト肝癌細胞株にDYRK family遺伝子を強制発現またはknockdown / knockoutし、in vitro培養系に抗癌剤を添加し、腫瘍細胞の増殖やアポトーシスに関連するシグナルをFACSやRT-PCR、Western blot等で解析している。CRISPR-Cas9システムを用いたknockoutを行うべく試行錯誤し実験を行っているが、なかなか効果的かつ効率的なknockoutが得られず、当初の想定よりも時間を要しているのが進捗がやや遅れている要因としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
原発性肝癌の根治的治療としては外科的切除で、早期には肝内病変治療としてラジオ波焼灼療法、肝動脈塞栓療法等がときに有効であるが、遠隔転移、胆管・血管内浸潤を呈するようになると予後不良であるため、より早期の診断法の確立及び新規治療法が切望されている。現在、切除不能肝細胞癌に対して臨床で使用されるの分子標的薬であり、腫瘍の細胞増殖と血管新生を阻害するlenvatinibやsorafenibの効果は限定的である。従って、肝癌における抗がん剤治療抵抗性の獲得メカニズムについて明らかにすることが急務と考える。これを目的に現在行っている肝癌細胞株を用いた抗癌剤治療抵抗性へのDYRK family遺伝子の影響についての詳細な解析には遺伝子のknockoutが必須と考え、今後もknockoutの実現に向けて成功先行研究を参考にさらに試行錯誤を継続し、解析を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
CRISPR-Cas9システムを用いた効果的な遺伝子ノックアウトがうまく行かずに一時的に実験が滞ってしまったため次年度使用額が生じた。次年度さらに試行錯誤して実験を成功させるために使用する。
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