研究課題/領域番号 |
19K08440
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
伊藤 弘康 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (80373075)
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研究分担者 |
石川 哲也 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (10288508)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HBV / 動物モデル / ワクチン療法 |
研究実績の概要 |
本年度は、主に新規HBV感染モデルマウスにおける宿主免疫応答の検討を行った。本新規モデルマウスはHSV-TK-WT(TK-WT)マウスにガンシクロビルを腹腔内投与することによりHSV-TK遺伝子が導入されている肝細胞が傷害を受け脱落し、その後HBVTgマウスから採取した肝細胞を経脾臓的に投与し慢性のHBV感染モデルを作製する。おおよそ約4割のマウスでHBVTgマウスからの肝細胞が定着するが、定着したマウスと定着しなかったマウスとでHBV特異的な宿主免疫応答の違いが認められた。定着したマウスでは血清HBs抗体の減少がみられた。一方、定着しなかったマウスでは抗体価の減少は認められなかった。また、HBs抗原特異的なIFN-gの産生能をELISPOTアッセイで検討したところ、定着がみられたマウスでは定着しなかったマウスに比べその産生能の低下がみられた。これらの結果よりHBVTg肝細胞が定着したマウスではHBs抗原特異的液性免疫および細胞性免疫が低下していることが予測された。さらに、HBVTg肝細胞が定着したモデルマウスと野生型マウスにHBs抗原およびアジュバンド(CpG-SPG)により免疫を行ったところ、本モデルマウスでは、血清HBs抗体価および脾細胞におけるHBs抗原特異的IFN-gの産生能は野生型マウスに比し低下していた。以上の結果より、本モデルマウスの免疫応答は慢性のHBV感染症患者に極めて類似していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究計画は、1)新規HBV感染マウスモデルにおける宿主免疫応答の解析 と 2)新規HBV感染モデルにおけるCpG-SPGのアジュバンド効果の検討 であった。1)のモデルマウスにおける免疫応答の解析では、定着したモデルマウスと定着ができなかったマウスを比較することができたため、宿主免疫応答の重要性が改めて確認できた。2)のHBs抗原とCpG-SPGによるワクチン療法の検討では、血清HBs抗体の検討および脾細胞を用いたHBV関連抗原に対するIFN-γ産生能の解析では、本モデルマウスがワクチン療法に対して抵抗性があることが示唆された。しかしながら、肝および血液中でのHBs抗原の解析が十分できなかった。このため、本ワクチン療法がどれほどの効果があるかは現段階では不明である。
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今後の研究の推進方策 |
初年度では、新規HBV感染マウスモデルにおけるHBs抗原とCpG-SPGによるワクチン療法による抗HBV作用の効果判定が不十分であったため、まずはその検討を行う。同時に、モデルマウスにおいてワクチン療法後の肝およびリンパ組織での網羅的な遺伝子解析を行う。初年度の結果より、本モデルマウスでは、ワクチン療法後、野生型マウスに比べ十分な抗原特異的免疫応答が誘導できないことを確認しているため、特に免疫応答を抑制するような因子(免疫抑制性のサイトカインや免疫チェックポイント因子など)に着目して検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
モデルマウス作製後、長期に経過観察した後に解析をする必要があり結果的に解析数が少なく解析費用が抑えられたと考えられる。したがって、ワクチン療法の検討が十分できなかった。現在、モデルマウスの確認には経過中の血清HBs抗原を測定することで可能になったため、効率的に解析を行うことができる。したがって、今後は安定的にかつ早期にモデルの樹立が可能であると考えられ、ワクチン療法を行う個体数が増えると予測でき、それらの解析費用に充てる。
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