研究課題/領域番号 |
19K08441
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山本 明子 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 准教授 (60402385)
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研究分担者 |
石黒 洋 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (90303651)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カルニチン / 中鎖脂肪酸 / 膵外分泌 |
研究実績の概要 |
(1)目的;慢性膵炎および嚢胞性線維症では、膵外分泌不全に加え、インスリン分泌の減少や慢性炎症によるインスリン抵抗性の増大により末梢組織での糖利用が低下するため、治療抵抗性の栄養障害が起こる。中鎖脂肪酸は脂肪酸結合タンパクに依存せず細胞内に取り込まれ、速やかにエネルギー源となると報告されている。また、炎症条件下のミトコンドリア機能不全を改善し、炎症性サイトカイン生成を誘導しない安全で適切なエネルギー源であり、インスリン抵抗性も改善するため、慢性膵炎や嚢胞性線維症では糖質に取って代わる最適なエネルギー源であると考えられる。カルニチンは長鎖脂肪酸をミトコンドリア内に運搬することが知られているが、中鎖脂肪酸の膜輸送を促進するという報告もあり、カルニチンは膵を含む末梢組織での中鎖脂肪酸のエネルギー利用を促進する可能性がある。本年度は、モルモットの膵臓から単離した小葉間膵管を用いて、カルニチンと中鎖脂肪酸が膵液分泌に及ぼす影響を検討した。 (2)方法;モルモットの膵臓を摘出し、collagenaseで処理し、実体顕微鏡下で鋭利な針を用いて、直径約100 μm、長さ約500μmの小葉間膵管を単離した。数時間培養し、両端が閉じて内腔に分泌液が貯留した単離膵管を、倒立顕微鏡のステージ上で、Cell-Takを用いてカバーガラスに固定し、37℃の重炭酸緩衝液で表層灌流した。1分ごとに明視野像を取得し、管腔内溶液の変化から水分泌速度を求め、膵管上皮の単位表面積あたりで表した。 (3)結果;重炭酸緩衝液で表層灌流すると0.37±0.05 nl/min/mm²(mean±SE,n=5)の基礎分泌を認め、表層灌流液に中鎖脂肪酸(C12、500μM)を加えると分泌速度は約20%増加した。C12の存在下にカルニチン(50μM)を加えると、水分泌速度はさらに増加した(基礎分泌の約2倍、p<0.01)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症による研究規制があり、計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
1.単鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸に対するHCO3-・水分泌の影響の検討 中鎖脂肪酸(C12、500μM)を加えると分泌速度が増加し、C12の存在下に血中濃度と同程度のカルニチン(50μM)を加えると、HCO3-・水分泌速度はさらに増加する(基礎分泌の約2倍、p<0.01)ことがわかった。さらに、モルモット単離小葉間膵管の溶液分泌(HCO3-・水分泌)に対する短鎖脂肪酸(C4、C6 )と長鎖脂肪酸(C16, C18)の影響およびさらにそれぞれのカルニチン投与時の影響を検討する。 2.モルモット単離小葉間膵管の管腔内pHの測定 モルモット単離小葉間膵管のマイクロパンクチャーを行い、管腔内のpHを測定することにより、増えた溶液がHCO3-であることを確認する。 3.単離膵管におけるカルニチントランスポーターの同定 モルモットの全膵および単離膵管におけるカルニチントランスポーターの同定をRT-PCR法を用いて検討し、タンパクの発現も検討する。 モルモット全膵及び膵導管細胞のカルニチントランスポーターの発現・局在を免疫組織化学的に検討する。 4.脂肪酸がグルコースに代わるエネルギー源になるかどうかの検討 モルモットの単離膵管を用いて表層還流液からグルコースを除外し、膵管からのHCO3-・水分泌亢進が脂肪酸のみでも生じるか検討する。
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