研究課題/領域番号 |
19K08443
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高井 淳 京都大学, 医学研究科, 助教 (80760587)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝細胞癌 / 全ゲノム解析 |
研究実績の概要 |
前年度と合わせ、B型肝炎・C型肝炎・非アルコール性脂肪肝炎より合計5症例の結節内結節型肝細胞癌を対象とした。乏血性の高分化型肝細胞癌部のゲノムDNAと多血性の中分化型肝細胞癌部のゲノムDNAに対し、同一症例のリンパ球DNAをコントロールとして、Novaseq 6000 Sequencing Systemによる全ゲノムシーケンスを施行した。前年度に確立した解析アルゴリズムを用いて、塩基置換の数、Mutation signature、染色体構造異常およびHBVゲノムのヒトゲノムへの挿入につき解析を行った。乏血部と多血部のゲノム異常の共通点(Trunk aberration)および相違点(unique aberration)について各症例で比較解析したところ、ヒト肝癌で最も高頻度に認められるTERT遺伝子に関連する異常はすべてtrunk aberrationとして認められることが分かった。TERT遺伝子に関する異常は、promoterのpoint mutationのみならず、染色体転座やHBVゲノム挿入など多岐にわたっていたが、いずれもTERTの高発現を引き起こす変化であり、肝癌のinitiationに関与するイベントと考えられた。一方、unique aberrationとしては、PTENやTP53などの癌関連遺伝子における異常が多数認められたが、症例によって異なっており、肝癌の多血化・悪性化には多様な分子経路の異常が関わっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度と合わせて、5例の結節内結節型肝細胞癌に対してマルチサンプリングを行い、全ゲノム解析を施行した。研究計画としてはおおむね順調に進展しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
全ゲノム解析については、塩基置換・DNAコピー数異常・構造異常の解析をさらに症例数を増やして進める予定である。オルガノイド培養についても、培養条件を確立させ、多数の症例でオルガノイドバンクを作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
全ゲノムシーケンスを行う価格が当初の見込みより低く、次年度の解析のために使用することが可能となった。
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