研究課題
膵癌は極めて予後不良の腫瘍であるが、近年増加傾向にあり、食生活の欧米化が関与していることが示唆されている。申請者はこれまでに、腸内細菌の変化が大腸癌の腫瘍浸潤T細胞を介し予後に影響を及ぼすことを報告してきた。また、膵癌においても腫瘍浸潤T細胞と予後との関連を見出しており、腸内細菌の関与を考えている。事実、マウスの研究では、特定の腸内細菌は腫瘍浸潤T細胞を介して膵癌の形成を促進している事が報告されている。本研究の目的は、ヒトの膵癌の形成における腸内細菌叢の関与を明らかにする事である。本年度は、膵癌切除症例162例の腫瘍内Tリンパ球(CD4陽性T細胞、CD8陽性T細胞、制御性T細胞)を免疫染色にて評価し、腫瘍内のTリンパ球( CD4陽性T細胞及び CD8陽性T細胞)が予後と相関する事を明らかにした。また、腫瘍近傍にリンパ濾胞様構造(TLS:Tertiary lymphoid structure)がある事を見出した。TLSは膵癌の約70%に存在し、TLSのある膵癌は予後が良好であった(Log rank test: P<0.001)。また、TLSを伴う症例では術後に化学療法を行なった症例で有意に予後の延長を認めた(Log rank test: P=0.01)。腸内細菌叢の解析は、preliminaryな実験では、メタ16S解析による腸内細菌叢の多様性および菌構成比率の解析に成功した。現在、前向きに膵癌患者の便を20例集積できており、次年度はさらなる症例の集積に努める。研究計画書に記載した腫瘍内Tリンパ球と腸内細菌の関連性のみならずTLSと腸内細菌の関連性にも注目し解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
膵癌患者の便は順調に集まってきている。また、予備検討では腸内細菌の解析に成功している。さらに便を前向きに集積して、腸内細菌と腫瘍内Tリンパ球との関連、また、今回新たに申請者が発見したTLSと腸内細菌との関連性を検討していく予定である。
腸内細菌と腫瘍内Tリンパ球との関連に関しては、本申請後に数本の論文が公表された。そのため、今回申請者が新たに意義を発見したTLSに関しても検討し、膵癌の腫瘍免疫に関する新たな知見を得る事を目標とする。
腸内細菌の解析を次年度に行うため、予算を一部繰り越した。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件)
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