研究実績の概要 |
自己免疫性肝炎(AIH)患者血液中のエクソソームの網羅的microRNA解析を行い、疾患特異的なmicroRNAの同定することを目的とした。 エクソソームの網羅的miRNA解析として、AIH4例、健常者4例の血清から網羅的解析を行ない有意差のある上位3つのmiR-7877-5p、miR-6806-5p、miR-557を選択し、これらmiRNAは脂質代謝やステロイドホルモン合成に関与することが明らかとなった。PCR可能なmiR-7877-5pとmiR-557の発現量をqPCRにてAIH患者26例、正常者12例、原発性胆汁性胆管炎(PBC)12例、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)12例の検討では、miR557、miR7855-5pの発現量が健常者と比較してAIH血清で有意に増加し、miR557の発現量はNASH, PBCと比較して有意にAIH血清で増加していた。また、miR7855-5pの発現量はAIH肝線維化進行例で有意に増加していた。このことから、miR557はAIHの診断マーカーとして、miR7855-5pは線維化進行マーカーとして有用であることが示唆された。今年度は、健常者末梢血単核球(PBMC)にmiR557 mimicをトランスフィクションし、サイトカインmRNAをqPCRで評価した。さらに、AIHの臨床像との関連を検討した。miR557 mimicをトランスフィクションしたPBMCでは、TNF、IL-6のmRNA発現量が有意に上昇していた。臨床像との比較では、急性発症型と比較して慢性型でmiR557の発現量が高値であり、ASTと正の相関が認められた。miR557の高値群は低値群と比較して有意に累積再燃率が高値であった。以上の成績から、細胞外小胞由来microRNAは、AIHの診断および再燃予測の新規バイオマーカーとして有用性なる可能性がある。
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