研究課題/領域番号 |
19K08448
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
芝田 渉 横浜市立大学, 医学研究科, 客員准教授 (00435819)
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研究分担者 |
金子 裕明 横浜市立大学, 医学部, 助教 (20760078)
前田 愼 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (40415956)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 胃癌 / 混在癌 |
研究実績の概要 |
胃癌の進行と癌の組織学的不均一性には大きな関連があることが推測され、獲得メカニズムを明らかにすることは、胃癌進展を抑制する対策となりうる。胃癌における不均一性とは分化型胃癌において未分化型成分が混在してくると仮説を立て、検証を行う。 1.早期胃癌内視鏡切除検体における臨床病理学的検討 当教室で早期胃癌に対し内視鏡的粘膜下剥離術(ESD)を施行した症例について、純粋分化型が2780例、純粋未分化型が87例、混在型が155例だった。混在型の特徴を分化型と比較すると、年齢、性別に差はなかったが、腫瘍径はやや大きく(16.1mm vs 24.4mm)、SM浸潤癌が多かった(12.2% vs 45.7%)。治療成績として、治癒切除率が低かった(92.0% vs 41.7%)(前年度よりも症例増加)。 2.オルガノイド細胞バンクの構築 患者固有の遺伝子変異やタンパク発現変化を効率よく網羅的に解析するため、生きた腫瘍細胞バンクを構築している。分化型癌、未分化癌、混在癌と考えられる腫瘍検体よりオルガノイド培養を行い、これまでに10例のオルガノイド培養に成功している。現在オルガノイドにおける分化型、未分化型の解析を行っている。 3.遺伝子変異解析 高分化型腺癌20例のFFPE検体を用いて、10遺伝子(TP53,ARID1A,CDH1,PIK3CA,RHOA,KRAS,TGFBR2,APC,CTNNB1,SMAD4)についてのNGS解析,及びCINパターンの進行胃癌において高頻度のコピーナンバー変化が報告されている11遺伝子(EGFR,ERBB2など)についてのコピーナンバー解析を実施した。TP53の変異を20症例中12例(60%)と高頻度に認めた。コピーナンバー解析ではERBB2の増幅を20症例中3例、Kras、METの増幅を1例に認めた。未分化型腺癌3例の解析も行い、2例にCDH1変異を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
早期癌からのオルガノイドの作成は非常に難しく、成功率が低いため。 また、混在癌について境界がはっきりとした症例が少なく、解析症例を選別するのに時間がかかっている。
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今後の研究の推進方策 |
レイザーマイクロダイセクション(LMD)を用いて、これまでの純粋型のみでなく、混在癌の分化型、未分化型の領域より腫瘍部、正常部よりサンプルを抽出する。採取したサンプルよりDNAを抽出し、whole exonシーケンスまたは胃癌パネル(作成済み)を用いてシークエンス解析を施行する。同時に遺伝子コピー数解析により増幅、欠失の検討やメチル化アレイなどによる網羅的メチル化解析も行う。 腫瘍の分化度を規定する分化から未分化型への変化には微小環境が深く関わっていることが予測されるが、マイクロダイセクションした組織内でのRNAアレイ解析を行い、微小環境における変化を同定する。特に分化型癌と未分化混在癌の違いを検討し、腫瘍微小環境におけるサイトカインや増殖因子など幹細胞の維持や分化誘導に関与する因子を解析、同定する。 作成したオルガノイド細胞を増殖させたのちに免疫不全マウス(ヌードマウスやNOGマウス)の皮下に移植し、腫瘍の増殖を観察する。増殖した皮下腫瘍について、臨床病理像との組織像を比較検討するが、分化型、未分化型癌が単独で存在する場合は同様の腫瘍組織像が得られると想定されるが、混在癌については、オルガノイドによって異なった組織像が得られる可能性が高い。
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次年度使用額が生じた理由 |
やや計画より遅れているため、使用額の残余が生じたが、次年度に追加して検討を急ぐこととする。
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