胃癌の進行と癌の組織学的不均一性には大きな関連があることが推測され、獲得メカニズムを明らかにすることは、胃癌進展を抑制する対策となりうる。胃癌における不均一性とは分化型胃癌において未分化型成分が混在してくると仮説を立て、検証を行う。 1.オルガノイド細胞バンクの構築 患者固有の遺伝子変異やタンパク発現変化を効率よく網羅的に解析するため、生きた腫瘍細胞バンクを構築している。分化型癌、未分化癌、混在癌と考えられる腫瘍検体よりオルガノイド培養を行い、これまでに15例のオルガノイド培養に成功している。オルガノイドにおける分化型、未分化型の解析を行っているが、明らかな未分化型の腫瘍オルガノイドは得られなかった。 3.遺伝子変異解析 高分化型腺癌20例のFFPE検体を用いて、10遺伝子(TP53,ARID1A,CDH1,PIK3CA,RHOA,KRAS,TGFBR2,APC,CTNNB1,SMAD4)についてのNGS解析,及びCINパターンの進行胃癌において高頻度のコピーナンバー変化が報告されている11遺伝子(EGFR,ERBB2など)についてのコピーナンバー解析を実施し た。TP53の変異を30症例中19例(63%)と高頻度に認めた。コピーナンバー解析ではERBB2の増幅を30症例中5例、Kras、METの増幅を1例に認めた。未分化型腺癌3例の解析も行い、2例にCDH1変異を認めた。 4. 分化型と未分化混在では明らかなCDH1欠損は認められず、CDH1のタンパク減少の傾向であった。純粋未分化型がんではCDH1が欠損している例を認めた。
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