Silmitasertibはセリン・スレオニンキナーゼの一種であるCK2の阻害薬であり、経口摂取可能な上、CK2 subunitのATP結合部位に競合的に作用することで、主にPIK3/Akt pathwayのリン酸化を阻害し腫瘍増殖を抑えるとともに、GEMやCDDPの抵抗性を司るDNA修復酵素MDC1およびXRCC1のリン酸化をも阻害し、抗がん剤感受性を増強させる効果も併せ持つ。申請者らが施行した胆管癌xenograftを使用した前臨床試験にて、SilmitasertibがGEM+CDDPへの上乗せ効果を認めた一方で、投薬経過中に薬剤抵抗性の獲得が観察された。また、2021年度にはSilmitasertibの胆管癌に対するPhase Ib/II臨床治験の結果が報告され、有望な結果であった。 すでにSilmitasertibおよびGEM+CDDPを投与されたマウス、GEM+CDDPを投与されたマウス、コントロールのマウスより得られたxenograftからそれぞれ3例ずつDNAを抽出しExome sequenceを行い、遺伝子変異などの違いを調べたところ、GEM+CDDPとGEM+CDDP+Silmitasertibの比較においてPGLYRP2、PCDH86などの遺伝子増幅も明らかにされた。 胆管細胞株HUCCT1にSilmitasertibを低濃度から投与後、繰り返しSilmitasertibの濃度を倍増させて細胞継代し、抵抗性株を作成しながら、Exome sequenceにて明らかになった遺伝子を通常の胆管癌細胞株および薬剤耐性獲得胆管癌細胞株に遺伝子導入する、in vitroの実験を行う予定であるが、薬剤耐性株の作成に時間がかかっている。現在のところ、in vivoでの検体から得られたデータをもとに解析を行い、薬剤耐性機序を明らかにしていくよう、研究を継続していく。
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