研究課題
【背景と目的】人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells, iPS細胞)は、無限に増殖する能力を保ちながら、体を形成する全ての細胞に分化する能力を持つ細胞である。再生医療のみならず、疾患の病態解明や創薬研究の基盤技術として期待されている。今回我々は、ヒトiPS細胞を用いて腸管上皮細胞を分化誘導し、再生医療や創薬研究に用いる十分な腸管上皮細胞(human iPS derived intestinal epithelial cells: hiPS-IECs)を作製できるか検討した。さらにhiPS-IECsを用いて炎症性腸疾患モデルの構築を試みた。【方法と結果】健常人の血液を採取し、血球細胞からヒトiPS細胞を作製した。このヒトiPS細胞からサイトカインとシグナル伝達経路阻害薬を用いて胚体内胚葉への分化を誘導し、さらにサイトカインの種類を変え三次元培養法にてhiPS-IECsを誘導した。分化誘導を確認するため、PCR法および免疫染色法にて腸上皮細胞マーカーの発現を解析したところ、作製した腸管上皮細胞は小腸の吸収上皮細胞マーカーを発現しており、小腸の吸収上皮細胞と考えられた。次にCRISPRiを用いてhiPS-IECsにおいて炎症性腸疾患関連遺伝子であるオートファジー関連遺伝子ATG16L1を抑制したところ、インフラマソーム経路が活性化することが明らかとなった。次にオートファジー活性化剤を添加し、ATG16L1を抑制したhiPS-IECsに対する炎症抑制効果を検討している。
3: やや遅れている
オートファジー関連遺伝子ATG16L1を抑制したhiPS-IECsに対する炎症抑制の実験において想定した結果が出ず、時間を要している。
オートファジー活性化剤としていくつかの候補薬を試したところ、最近、候補となる薬剤が絞れたため、そのオートファジー活性化剤をATG16L1を抑制したhiPS-IECsに添加し、炎症抑制効果の検討をすすめる。
予定より研究が若干遅れており、物品の使用が滞っていた。今後は引き続き、ATG16L1を抑制したhiPS-IECsに対する炎症抑制効果の検討をすすめ、細胞培養液、試薬等に使用する。
すべて 2021
すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)