研究課題/領域番号 |
19K08455
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
渡邉 智裕 近畿大学, 医学部, 准教授 (40444468)
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研究分担者 |
工藤 正俊 近畿大学, 医学部, 教授 (10298953)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RIP2 / 炎症性腸疾患 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
「自然免疫反応のシグナル伝達分子であるReceptor-interacting protein 2 (RIP2)の活性化が炎症性腸疾患の病態にどのように関わるのか?」という課題について、ヒト臨床検体を用いた検討を展開した。その結果、以下の事実を見出した。 1)クローン病疾患感受性タンパク質であるATG16L1とRIP2が細胞内で結合することを強制発現細胞を用いた検討で明らかにした。RIP2はCARDドメイン・Intermediate ドメイン・Kinase ドメインから構成される。ATG16L1はRIP2のKinase ドメインに結合することを見出した。 2)ATG16L1の強制発現により、TLR2を介するNF-kappaBの活性化が減少することがReporter Gene Assayにより明らかになった。ATG16L1とRIP2の結合はTLR2と RIP2の結合を阻害することにより、TLR2を介する炎症反応を抑制した。その効果は ATG16L1のユビキチン化抑制を介していた。 3)クローン病・潰瘍性大腸炎の炎症局所において、ATG16L1を発現する樹状細胞の割合は炎症性サイトカイン(IL-6・TNF-alpha)の発現と逆相関した。クローン病患者の炎症局所では、ATG16L1を発現する樹状細胞の割合が寛解導入に伴い、著明に増加した。以上の結果から、ATG16L1を介するシグナルはRIP2を介する炎症反応を抑制し、腸管免疫の恒常性を維持していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ATG16L1の機能喪失変異はクローン病発症の危険因子であることが知られているが、そのメカニズムの詳細は明らかになっていない。今年度は、ATG16L1がRIP2に結合し、RIP2を介する自然免疫反応を負に制御することを見出した。また、炎症性腸疾患患者の炎症局所において、ATG16L1の発現が炎症性サイトカインの発現や活動性に関与することも見出した。このように、今年度の研究において、RIP2が炎症性腸疾患の新規治療標的として有望であることを示唆する新たな機序を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
RIP2が炎症性腸疾患の新規治療標的として有望であることを確認するために、ほかの腸炎モデルマウスでもRIP2の病原性を確認する必要がある。このため、細胞移入型腸炎モデルにおけるRIP2の病原性を確認することを予定している。また、「RIP2の活性化・発現が炎症性腸疾患患者のどのようなタイプにおいて、特に関連するのか?」について、解明を進める。
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