研究課題/領域番号 |
19K08456
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
山田 晴美 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 研究員 (10769425)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | DNAメチル化 / クロマチンリモデリング因子 / 胃がん |
研究実績の概要 |
胃がんなどの炎症関連がんにおいては、多数の遺伝子がメチル化されている状態、即ち、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)は、予後や治療効果と関連することが知られている。一方で、その形成メカニズムは十分に解明されていない。申請者は、EBV感染のない胃がんの変異解析およびメチル化解析から、クロマチンリモデリング複合体SWI/SNFの構成因子であるARID1A変異をもつ胃がんはCIMPを示すことを予備的に見出している。 そこで本研究では、ゲノム編集によりARID1Aを不活化することで、CIMP(異常メチル化)が誘発されるかどうかを明らかにする。さらにその分子メカニズムを、遺伝子のメチル化感受性の変化およびメチル化調節因子の変化に着目して解明する。 1年目の本年度は、ARID1A不活化細胞の樹立とそのゲノム網羅的メチル化解析を行った。DNAメチル化されうるCpGアイランドが多数残っており、PIK3CAが既に活性化している293FT細胞を用いて、CRISPR-Cas9システムによりARID1Aのノックアウト(KO)細胞を4株樹立し、20週にわたり長期培養を行った。親クローン1株、野生型(WT)クローン2株およびKOクローン2株につき、培養開始後0、4、20週時点でゲノム網羅的メチル化解析を行った。その結果、KOクローンでは培養期間依存的にメチル化レベルが上昇(Δβ>0.5)するゲノム領域が多いことが分かった(4週後:2,467-3,755、20週後:6,505-6,864領域)。以上の結果から、ARID1Aの不活化により異常DNAメチル化が誘発されることを明らかにした。次に、ARID1A不活化によるCIMP誘発の分子メカニズムを解明するために、ARID1A KO細胞におけるDNAメチル化関連因子DNMTとTETのmRNAの発現変化を調べたところ、発現レベルは変化しないことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の計画のうち、293FT細胞を用いたARID1Aノックアウト細胞の樹立、および、2020年度以降のARID1Aノックアウト細胞のゲノム網羅的メチル化解析とゲノム網羅的発現解析を達成した。したがって、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度以降は、以下の通り研究を推進する予定である。 2019年度に樹立したARID1A KOクローンを用いて、メチル化誘発の標的ゲノム領域におけるクロマチン構造の変化の解析を行う。具体的には、1)ヌクレオソームポジションの変化をATAC-seq法、2)SWI/SNFの局在変化および転写抑制マークであるH3K27me3の変化をChIP-seq法により解析する。また、ARID1A KOクローンにおけるメチル化調節因子の解析を行う。具体的には、1)活性変化を、DNMTによる5-mCの生成量、TETによる5-hmCの生成量のin vitro測定、2)ゲノム上の局在変化をChIP-seq法により解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度に樹立したARID1Aノックアウトクローン4株のゲノム網羅的メチル化解析を行う予定であったが、本年度の使用額内では2株のみしか解析できなかった。今回生じた次年度使用額と来年度助成金を合わせて、「今後の研究の推進方策」に記載した解析に加え、残り2株のゲノム網羅的メチル化解析を行う計画である。
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