研究実績の概要 |
胃がんなどの炎症関連がんにおいては、多数の遺伝子がメチル化されている状態、即ち、CpGアイランドメチル化形質(CIMP)は、予後や治療効果と関連することが知られている。一方で、その形成メカニズムは十分に解明されていない。申請者は、EBV感染のない胃がんの変異解析およびメチル化解析から、クロマチンリモデリング複合体SWI/SNFの構成因子であるARID1A変異をもつ胃がんはCIMPを示すことを予備的に見出している。そこで本研究では、ゲノム編集によりARID1Aを不活化することで、CIMP(異常メチル化)が誘発されるかどうかを明らかにする。さらにその分子メカニズムを、遺伝子のメチル化感受性の変化およびメチル化調節因子の変化に着目して解明する。 3年目の本年度は、これまでの解析に使用していた293FT細胞に加え、胃正常上皮細胞GES1でもARID1Aノックアウトによりメチル化異常が誘発されるかを検討した。GES1親クローン1株、野生型(WT)クローン3株およびKOクローン3株につき、培養開始後0、4週時点でゲノム網羅的メチル化解析を行った。その結果、ARID1A KOクローンでは、0週時点で、7,167領域でメチル化レベルが上昇(Δβ>0.2)した。しかし、期間依存的なメチル化領域の増加は認めなかった。これは、GES1は正常細胞であるが、メチル化領域が多いがん細胞に近いメチル化パターンを有しているためと考えられた。 1-3年目までの成果より、ARID1Aの機能欠失がCIMPを誘発することが示唆された。
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